——受賞と聞いて一番最初に思ったこと、またはしたことを教えてください。

お恥ずかしい話なんですが、やはり勃起しました。はい。

——受賞を聞いた時は何をしていましたか？

真夜中でしたが外で野球をしてました。ひとりで。
真っ暗な場所でファーストを守っていたら
担当の大熊氏から電話が来ました。

——受賞と聞いてから、制作への意識が変わったなどありますか？

何も変わりません。常に全力ですから。その結果が出たというだけです。

——本作を制作するに至ったきっかけが多々あったかと思いますが、
中でも一番大きかったものはなんですか？

前作の連載が終わり、毎日無気力でした。
酒を飲み過ぎてゲボを吐いたんです。口を拭おうと山積みの本の中から
一冊手にとったら
担当編集の大熊氏が送ってくれた小説でした。狩猟が題材の本でした。
光って見えましたが、ゲボが反射していただけかもしれません。

——本作において、読者に注目してほしいポイントはどこでしょうか。

男たちのふつくしい裸です。太鼓腹でも胸毛が生えていても
ふつくしい男たちの裸体を描いていきたいです。

——制作する上で特に心がけていることはなんですか？また難しいと感じる部分、楽しいと思う部分もうかがえたらと思います。

真面目な話、アイヌ文化についてです。
どれだけ我々が勝負にでているか。
大学でアイヌ文化を研究している教授の方々に協力していただいている上で
エンターテインメントに仕上げています。
いいかげんなものを描けばご協力して頂いている方々にも泥を塗りかねません。
アイヌ文化には北海道内でも地域差があり
一つの資料ではこう書かれていたものが
別の資料では違うというのはよくあることです。
そういうことがあれば専門家に相談し
うまい具合の落とし所を探ります。
奥深くて、時間がないというのもあり
カバーしきれない面もあります。
例えばアイヌの衣服の素材や文様、木彫の文様にも時代性や
地域差がありまして自分でも自信のない部分はあります。
誌面で大きなミスがあれば北海道大学や千葉大学の教授からご連絡があり
単行本で修正するということも良くあります。
６巻でいうならばトンコリの形が良くないとご指摘を受け
すべて単行本で描き直しました。

——先生が描くキャラクターは個性的でとても魅力的ですが、いつから独特な個性を持った人に興味を抱いていましたか？好きな人物がいましたら、その理由もあわせてお教えください。

初めて買ったCDはマイケル・ジャクソンです。
まれに見る奇人だったと思います。
映画のムーンウォークは夢中で何度も観ましたが
今観ると奇っ怪な映画です。

——マンガ家を志したきっかけをお教えください。また、絵を本格的に描き始めたのはいつからでしょうか。アナログからデジタルへの移行の経緯もあわせてうかがえたらと思います。

寺のお堂でお仕置きに縛られていまして、こぼれる涙を足の指ですくい
床にネズミの絵を描きました。すると和尚さんが本物と間違えて
あ、これ雪舟の話でした。水墨画家の雪舟の話です。

——『好きだ』と初めて意識したマンガ家および作家、または作品はなんですか？

やはりキン肉マンでしょうか。
空を自由に飛びたいなといえば、タケコプターじゃなくて
オナラ派ですね。

——ここだけでしか教えられない、今後の『ゴールデンカムイ』のキーワードがありましたらお教えください。

「そんなとこ舐めたら疫病になりますよ！？」ですね。
村西とおる監督の名言です。

——最後にファンの方々にメッセージをお願いいたします。

単行本を買ってくれた皆様のおかげでゴールデンカムイは
マンガ大賞の一番になれました。
本当にありがとうございました。この御恩は漫画で返します。