週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ ソウマトウ先生特別インタビュー

ヤングジャンプ新人漫画大賞、第三回審査員のソウマトウ先生に突撃インタビュー!
ソウマトウ先生ご自身の新人時代の話から『シャドーハウス』の創作に至るまでの過程やヤングジャンプでデビューを目指す新人の方に向けてのエールをお届け!

――はじめにソウマトウ先生の新人時代についてお聞かせください。漫画家を目指されるとなったときにまずしたことや戦略などがあれば教えてください。

雑誌の新人賞への投稿と同人活動を並行していました。

最初は、新人賞にだけ応募していました。その後何作か描きましたが、何が自分の強みになるかわからず書きたいものが定まらないという状態で投稿を続けるのは困難でした。

そこで当時、創作同人イベント「コミティア」に定期的に参加することをノルマにしました。絵柄は青年誌風から少女誌、ジャンルはギャグ、ラブコメ、ホラー、ファンタジーといったように次々変えていくことで作風の方向性を模索していました。
締切を決めて定期的に漫画を描く練習にもなったと思います。

最初はうまくいきませんでしたが、回を重ねる中で何かしら手応えのあったものを再度試しているうちに部数が伸びていきました。ヤンジャン編集部の方にも声をかけていただいたことで読み切りや連載に繋がり、今に至ります。

――内容に関してはご自身の向き、不向きを見定めながらトライ&エラーを繰り返していたのですね。絵について何か練習していたことなどはありますか?

デビュー前はほとんど何もしていませんでした。(笑)シンプルにアシスタントが長かったので、背景などを描くことは仕事でやっていました。それが経験値として蓄積されて、漫画を作るベースが培われたと思います。

逆にアシスタント歴が長いとキャラクターをあまり描かないので、背景に溶け込むような無難な絵になってしまったりもします。

画力は向上するものの、平均的にうまくなるという感じなので、キャラクターのデザインはかなり意識的に取り組んでいましたね。

――デビューをするまでに苦労したことはありましたか?

漫画家を目指しはじめた頃は、一作読み切りを描き上げてしまうと満足してしまってそれ以降描きたいものが見つからないという状況に陥るのは割とよくあることだと思います。編集さんに、「では次の作品を。」と言われた時に自分も「アイデアが出なくて困った、どうしよう。」という心境でしたね。

そこで一度漫画家を諦めかけました。描きたいものがない状態だと、自然と描かなくなってしまうんです。

自分がその状態から脱却できたきっかけが、先ほどお話しした同人活動で作品を人に見せるということでした。自分が作ったものが読者にどのように響いているのかという点や、「こんなものを見たいです。」と言ってもらえることは、結構大事だと思っています。

プロで描くということは、何か需要を満たすことでもあると思います。意外と、自分の才能ってそこなの?とか、このジャンルだと反応がいいな、といったことは誰かに見てもらわないと気づきにくいと思いますし、それを踏まえた上で自ずと描きたいものが見つかってきたりもするのだと思います。

――編集者と打ち合わせをするときに新人時代、気をつけていたことはありますか?

漫画家志望者にありがちな悩みですが、編集さんと打ち合わせを重ねているうちに、だんだん自分が何を描いているのか分からなくなることがあります。必要なこととはいえ折り合いが難しいです。

自分自身が新人時代に長い間泥沼にはまった部分がこれです。アドバイスを聞いてその通りに描いていると、本来自分が描きたいものとはずれてくるしオーケーも出ないみたいなことですね。

そういうちょっとした諦めの積み重ねはモチベーションの低下にもつながっていきます。

ある時から、打ち合わせの時に指摘されたことをそのまま反映するのではなく、編集さんがこういうことを言いたかったのかな、それだったらどう修正したらもっとうまく伝わるかなと自分なりにかみ砕いて考え、確実に修正前より面白いものにすると意識しだしてからようやく打ち合わせが進むようになりました。

それができない場合、その展開はやめ、全く別のネームを切り直します。自分が納得していないのに言われるがまま修正をしても全然自分の気持ちが入っていないから、結局誰も面白いと思えないものになってしまうと思うからです。

――新人時代の貴重なお話、ありがとうございます。『シャドーハウス』連載までのところでいうと、どこが一番大変な部分でしたか。

ネタ出しには苦労しましたが、『シャドーハウス』に決まってからは早かったような気がします。

決まる前のネタ出し中は、ちょっとした取材に行ったりしながらネームを描いていました。けれども、何かこれは続かないな、読み切り止まりだな、といったことも多々ありましたね。

編集さんにもアドバイスをいただき、色んなネタで挑戦をしていたのですが、あるとき編集さんのオーダーを割と無視して描いたものを出したら、これいいじゃんという感じで『シャドーハウス』を作り始めることになりました。

もちろん、編集さんとの打ち合わせに意味がないということではなく、以前の打ち合わせで話したことなどが、後から効いていたりもしますね。

当時の編集さんと自分の趣味は結構違っていたのですが、編集さんに「今こんなNETFLIXのドラマにはまっているんですよ」と熱狂的なプレゼンをされたりして(笑)聞いている時は全然興味がなかったものの、それが意外と記憶に残っていて後からそういった雰囲気を組み込んでみたこともありました。

こういう偶然得た知識や趣味と違うものがふわっとヒントになることもあり、その点は助かった部分かなと思います。

――なるほど、そうした雑談の部分も含めた積み重ねが意外と効いてきていると。『シャドーハウス』では魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、魅力的なキャラクターをつくるために意識されていることございますでしょうか。

『シャドーハウス』の場合、キャラクターをつくる時は作品が西洋風の世界観なので、海外の俳優なりモデルなりの似顔絵を描いてみて、この辺のパーツいいなという部分を組み合わせつつ、何パターンも描きました。

それを見ながら、このキャラクターはどんな感じの性格かな、どの傾向が合うかなといった形で、内面を作り込みキャラにしていきました。

ビジュアルと性格を別々にストックしておいて、出したいキャラクターの性格に合わせて、雑に落書きしてあるものや新たに描き起こしたイラストのサンプルから相性が良さそうなものを選び出し、さらに性格に合うような特徴をつけていくみたいな感じですかね。

あとは癖の強いちょっと変なキャラクターは意外と手癖で描いていたりもします。『シャドーハウス』だと、エドワードやダクラス班などは昔からの手癖です。性格と合う時は思いついたまま使っていますね。

――『シャドーハウス』はキャラの数も多いですが、ビジュアル面で描き分けなどこだわりがあれば教えてください。

やっぱり全員違うので服が大変ですね。とりあえず顔をつくっても、顔のない人たちが一人ずつ足されていく。なので原稿の仕上げギリギリまで服のデザインが決まりません。

デザインをする時には実際にあった昔の服などの資料を見たりもしています。ファンタジーではあるので、映画などでもよく見かけますが、現代の服とミックスして描いている部分も多いです。そうすると元ネタが同じでも違う洋服に見えると思います。

あとは西洋的なキャラクターであることがぱっと見て分かるように、日本の漫画でよく見るような髪型にはしていません。例えば、目や眉に前髪がかかっていたりストレートヘアのキャラクターはあまりいないので、面倒くさいといえば面倒くさいんですけどね。(笑)

それとモブキャラクターは全体の雰囲気のイメージの中でつくっているのですが、主人公だけはきちんと目立たせなければならないので、パターンをいくつも出してつくりました。

主人公であるケイトに関しては、第一話の十二ページ全部描き上げた後で、原稿を全て描き直しました。服装が気に食わないということになり、本当に描いてから全部変えましたね。服だけでなく、髪形も変えました。十二ページ仕上げ終わってからだったので、悲惨だった覚えがありますね。

――キャラメイクのお話、有難うございます。漫画を描く際、読みやすくするために特に意識されていること教えて下さい。

当たり前ではありますが「読者のことを考える」ということです。自分が見たいものは意外と読者の見たいものとは異なるようで、編集さんからもよく指摘されていました。

編集さんとの打合せでネームを見せた時にコマを指さして
「これどうなったの?」と聞かれた時に、自分側は「えっ、その話はどうでもよくないですか?」と答えると、「いや、ここが見たいんだよね」と返されることがあって、そこは打ち合せを通して気にするようになりました。

あと連載が始まってから意識し始めたのは、大きい絵を入れるということですね。

話を詰め込みたいという思いから、ついコマ割りが細かくなりますし、描き手の目線からすると人物のアップの絵、顔の回りにだけ寄る絵はパターン出しが難しいので避けがちです。

けれどもそういった絵こそ、読んでいる人が見たいものでもあると思うので、意識して描くようにしています。逆にそこに気を遣わないとあまり印象に残らない話になる気がします。

『シャドーハウス』で言えば、一巻から三巻、四巻ぐらいまでは全体的にコマがとても小さくなっていました。読者を意識せず描いていた結果そうなってしまったのだと思います。

他にも、情報をあれこれ入れすぎてしまうと話が煩雑になってしまうこともありますね。何となく描きたい要素だけれど、重要度の低いものは削除していかないと読む側の混乱を招いてしまいます。

描き手からすると、なるべく情報を入れてしまう方が後々面倒くさくないと思うのですが、そこで入れたとしても必要な時に読者が忘れている可能性も高いですし、読みやすさを優先する為にも情報の取捨選択は大切だと思います。

――作画と原作で分かれて、共同で作品を作るときに必要なこと、気をつける点があれば教えてください。

そもそも一緒に作品を作ることはすごく難しいと思います。その上で必要なのは、当然でありますが、「全てを言語化していくこと」だと思います。

アクションひとつとっても、絵をしっかりと描かずに「こういうふうにネームを進行してください。」と大雑把な指定を出されても、きちんと伝わらない状態で「分かりました。」と作業を進めてしまうような関係性だとすぐ破綻してしまいます。

原作担当は、作画担当がこんな絵が得意そうだからネームにしてみるということもありますし、作画担当の方も、原作担当はこういうニュアンスでネームを切っているな、というような、お互い何ができるのかをちゃんと把握したり、口を出せる範囲を決めておくことも大切です。

そして実際に意見が衝突した時に話し合えるかどうか。いくら打ち合わせをしたとしても、やはり絵を描く段階で「あれ? これはどうなっているんだろう。」ということは頻繁にあるので。

――ヤングジャンプで漫画を描いていて衝撃的だったことや印象的ななどございますでしょうか。

やはり「週刊連載」ということ自体が衝撃的でした。打ち合わせや作品づくりの方法が月刊の連載とはかなり違うと感じます。月刊の場合は特に催促されなくても自分である程度、八割ぐらい固めてから編集さんに見てもらっていましたが、週刊の場合は、それ以前の状態で見せなければいけない時もあります。

今日中にネームを作らないと原稿が仕上がらない、それなのに何も思いつかないという時は、10%程でも取りあえず編集さんに見せるということもあります。話し合いの中でネームを完成させるというやり方です。そのため時間がないにも関わらず、打ち合せの回数は月刊で描いていた時よりも多くなりました。

現在は毎週平均二回打ち合わせをしています。プロットを書いて、ネームを出して打ち合わせ、ネーム修正して打ち合わせ、最後に本ネームを出して微修正、そこからようやく原稿に取り掛かります。納得がいかない場合は、さらにもう一回ということもありますが…。

週刊連載はすぐ話し合って、描いて、またすぐ出してというハードなキャッチボールのような状態だと思います。月刊連載とは同じネームと言っていいのかというくらいにつくり方に違いがありますね。

『シャドーハウス』も最初の方はまだ描き溜めていた余裕があり、月刊の時のように八割、九割できたものを提出していたので、その時はあまりキャッチボールがなかったなと思います。

ただ『シャドーハウス』の作中で言うと、「お披露目」くらいから打ち合わせのキャッチボールが細かくなっていきました。「お披露目」はあんなに大きいイベントにするつもりはなく、三話ぐらいでさっさと終わるイメージでした。
打ち合わせの中で「地図欲しいっすね。」といった話が出て、地図を描くために必死に庭園のギミックを作り込んだ結果、何だかんだ長いエピソードになりました…。

意外とそういったむちゃ振りみたいなものがある方がよいのかなと思います。結構怠惰な方なので、言われなければやらないこともしばしば。「ここめちゃくちゃ気になります。」みたいに言われてから、「ああ、そこ詰めないとな。」と考え始めますね。

大変だなとは思いますが、結果的にそれが効いてきたりするので、編集さんの突っ込みであったり、作品に対する疑問は、ちゃんと反映させたほうがいいかなと思っています。

一人だけの力でも描ける人は描けると思いますが、どちらかというとそういう描き方が向いているのは月刊などであって、週刊で描くにあたっては編集さんとの二人三脚が重要なのかなと思いました。

――最後に今後応募される方へのメッセージやエールをいただけますと幸いです。

週刊連載をするという覚悟さえあれば大丈夫です! 頑張ってください!

ヤングジャンプはメジャーな雑誌なので、そこでトップに居続ける漫画家の先生たちというのは天才か化け物だと思っています。何でこんなペースでずっと面白いものを描き続けられるのかな、と。そしてそういう先生たちは誰よりも忙しいはずなのに、大体めちゃくちゃ元気なんですよ。

自分自身、天才でも化け物でもない方の漫画家なので常に満身創痍ですが、天才と比べない、自分なりに努力する、雑誌での居場所をつくる、ということを意識しています。

漫画賞では平均的にクオリティーを高めることよりも、一か所だけでも伝えたいことに全力で向き合ってみてください。その人ならではの読者に刺さるようなシーンがある、そんな作品をお待ちしております。

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