週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 田中一行先生特別インタビュー

レッスン2:漫画家の条件を疑え――。

「Q.2 漫画家の仕事って何ですか?」

下元 田中先生は私生活でもギャンブルやゲームに興味はありますか?

田中 僕、ギャンブルは一切やらないです。TVゲームやカードゲームは大好きです。ギャンブルは担当編集さんが好きなので代わりにやってもらっています。

下元 (!)そうなんですね。なぜ聞いたのかというと、自分の趣味を題材にすると、かじっているからこそ専門的になってしまって、面白さから離れてしまうことが多いんです。

田中 なるほど。これはそもそも漫画家の仕事って何だっていう話になってしまうんですが、僕は漫画家の仕事って、漫画の面白さの「核」を磨くことだと思うんです。

田中 新しく漫画を作るとき、「あ、これ何かいいな」と思ったから描き始めるわけじゃないですか。「あ、これ何かいけそう」と思ったそのとき、頭の中にピーンときた「何か」があるわけですよね。この非常にふわっとした「何か」が自分が描くものの面白さの「核」になると思うんですよ。これがはっきりわかっていれば面白さが題材に左右されることは減ると思います。

ここで、多くの方が間違いがちなのは、「あ、何かいいかも」と思ったら直ぐに描き始めてしまい、行き当たりばったりになってしまうことです。「ピンときた」くらいの段階で思考を止めてしまうから、その面白さの核を読む人に伝えきれない漫画ができてしまいます。完成させるまでのどこかで、漫画家はピンときた「何か」に対して、なぜ自分はこれが面白いと思ったのかを徹底的に考えなければいけないんです。

田中 他人に説明できなくてもいいから、少なくとも自分自身は理解する必要があります。「なぜ自分はこの何かを面白いと思ったのか」を考え、アイデアのディティールを磨いていってください。

ちょっと極端な意見かもしれないですけど、この核を磨くことって漫画家じゃないとできないんですよ。編集さんにはできないと僕は思っています。でも、勘違いしないでほしいのは、しっかりした核を用意することは漫画家の仕事であって、編集さんができる必要はありません。逆に言うと、それができることが漫画家の必要最低条件だと思います。なので、他の技巧的なことよりも先に、最初に面白いと思った「何か」の正体を見極められるようにしてください。

下元 ありがとうございます。先生の漫画でも核は意識されているのでしょうか。

田中 もちろん僕の漫画にも核はあります。1番は驚かせることです。僕は読者の皆様にびっくりしてもらえればどんな題材でも良いんです。でも、それが1番やりやすいのがギャンブル...というか、ゲーム。ルールを作り、そのルールを裏切るという方法ですね。賭けに勝つことや大金を手にすることよりも、ギャンブルを土台にシステムを作り、皆を驚かせることが僕の作品の核になります。

田中 趣味の話に戻すと、「皆を驚かせる」という核を分かりやすく表現するために、趣味でもあるゲームを取り上げています。核を先にしっかり磨いていれば、趣味を題材にしても作品の面白さはぶれないと思います。

次回のテーマは「編集者の言葉」を疑え――。
「編集者との向き合い方」は「自分の漫画との向き合い方」にも通じる?!

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