週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 久住太陽先生特別インタビュー

突っ走れ! 連載までの一本道!! 久住太陽先生による新人作家お悩み・質問回答コーナー!!
『ウマ娘 シンデレラグレイ』の作画担当である久住太陽先生に新人作家が抱えている悩みや疑問を解決していただく企画!!!

第1コーナーは、ネーム道を突っ走る!!

Q1: 分かりやすい・読みやすい漫画にするために意識していることを教えてください!!

A1: 普段は基本に忠実な表現を心掛け、いざという時にだけ奇抜な演出やコマ割りを使うようにしています。また、同じ話数に似たような表現を使わないようにも意識していますね。あとはセリフの文字量などでしょうか。特殊な演出やギャグシーンなどの例外を除き、吹き出しの中の行数を3・4行以内にするなど、自分が見て読む気になる程度の文字量になるよう調整しています。

Q2: 『ウマ娘 シンデレラグレイ』では史実に基づいて作品が描かれているので、キャラクターの勝敗が分かっている読者も多いと思います。そのような読者にも楽しんでもらえるように意識していることはありますか?

A2: 「誰が勝つか」よりも「誰をどのように勝たせて、どのように負けさせるか」を意識して描くようにしています。多くのバトル漫画においても最終的に主人公側が勝つことは分かったうえで読者は読んでいると思うので、“勝敗が分かっていること”に関してはあまりデメリットだと思ってはいないです。逆に「誰が勝つのか分からない」という層もいるこの作品は恵まれているのかもしれません。

Q3: 『ウマ娘 シンデレラグレイ』は非常にテンポ良く話が進んでいくことが魅力の一つだと思います。ペースが速い展開の中でも、ここだけは外さない・じっくりと見せるということを意識している部分があれば教えてください!!

A3: キャラクターの描写に無理矢理感が感じられないように、言動や行動に説得力を感じられるまで尺を使って描くようにしています。常に読者側に立ち、読んで少しでも違和感や疑問が生まれたら、ページ数を増やしてでも納得するまで直していますね。話数が増える場合もあります。

Q4: 第1話の作り方についてお話を伺いたいです。読者を惹きつけるために、第2話を読んでもらうために工夫したことを教えてください!!

A4:  「この主人公がこの目標を叶える瞬間を見届けたい!」と読者が思ってくれるようにキャラクターの魅力と目標を分かり易く明確に表現するよう心掛けました。オグリキャップについては「考えが読めない馬」と云われていた競走馬がモデルなので、敢えてその部分を強調し「次は何をしでかしてくれるだろう?」という好奇心を刺激するように意識して描写するようにしています。

第2コーナーは、キャラクター道をひた走る!!

Q5: オリジナルキャラクターを作り出す際に内面とデザイン面でそれぞれ大切にしていることがあれば教えてください!!

A5: 内面については表層と深層を考えるようにしています。一目で分かるキャッチーな部分と、描写が増えるごとに見えてくる本質的な部分です。そして本質的な部分についてはとにかく浅くしないようにしています。舞台装置的なキャラクター、記号的なキャラクターは避け、一人一人にちゃんと積み重ねてきた人生があるのだということを意識してデザインしています。誰を主人公にしても大丈夫なくらいに。 デザイン面はそれぞれモチーフを決めて、そのモチーフを擬人化するというイメージです。 一つのテーマやモチーフをベースに構築すると、デザインに統一性と安定性が生まれ、ブレが少なくなる気がします。

Q6: キャラクターを動かす際に最も大切にしていることは何でしょうか?

A6: 物語の都合でキャラクターの事を蔑ろにしないことです。例えばキャラクターが泣いた方が盛り上がりそうな場面があったとしても、その涙に少しでも嘘があれば無暗に泣かせないようにしています。泣かせるのであれば相応の説得力と必然性を用意するべく、むしろ物語の方をいじくります。作者本人が恣意性を持ってキャラクターを描いてしまうと読者は敏感に感じ取ってしまうもので、その薄っぺらさは必ず見抜かれると個人的には思っています。なので常に僕自身がキャラクターに寄り添って、丁寧にその心情を深読みしながら描く事を大切にしています。

Q7: 主人公オグリキャップには多くのライバルがいると思います。オリジナルのライバルキャラクターを作る際に心がけていることを教えてください!!

A7: 主人公を喰うくらいの気持ちで描くようにしています。「負けてほしい」とか「負けて当然」みたいなキャラは作らないようにしています。

第3コーナーは、作画道をこつこつと。

Q8: 新人時代はどのような絵の練習をなされていたのか教えてください!

A8: 模写・クロッキー・デッサンなど、皆さんが行っているような練習は一通りやりました。けれどやはり、完成原稿を作ることが一番身になったと思います。何から始めたら良いか分からない人、上手くなりたいけどどんな練習をすれば良いか分からない人は、とりあえず漫画を描きましょう。漫画を完成させる事が一番の経験値になると個人的には思います。

Q9: プロの方々のようなカッコよいキャラ絵を描けるようになりたいです! 意識すべきパーツ・差が出る部分を教えてください!!

A9: プロの方々が描く絵は何が違うか、僕も正直よく分かってないのですが…基礎以外で云うのであれば、描き込みの差というのは一つあると思います。中でもとりわけ差が出るのは、髪の毛と服のシワでしょうか。注目度が高い顔の中で一番情報量が多く、動きの出る部位である髪の毛。端的にキャラクターの動作を伝えることのでき、常に変動し続ける服のシワ。静止している上に、基本的に白と黒で表現するしかない漫画の世界において、この二つは非常に重要なファクターです。これが極まっている絵は個人的にすごくカッコよいと感じますね。…と偉そうに語りましたが、僕自身も慣れてくると結構省略してしまう部分でもありますので、意識的に見直して納得するまで修正するように心がけています。

Q10: 『ウマ娘 シンデレラグレイ』では“目”が印象的なキャラクターたちが多いと思います。“目”のレパートリーを増やす方法を教えてください!!

A10: “目”の種類をカテゴライズするとやり易いと思います。例えば形は「ツリ目」か「垂れ目」か「普通」か、瞳は「三白眼」か「黒目がち」か「普通」か、虹彩は?瞳孔は?それぞれの色は?など、一つ一つ決めていけばレパートリーは無限大です。

Q11: キャラについて作画ペースを上げるコツなどはありますか?

A11: プライベートを削る。

Q12: アナログの線画をデジタルで仕上げるという手法で原稿を描かれている理由、利点などありましたらお伺いしたいです!

A12: 線画はとりあえず前には進むからです。デジタルでやると何度でもやり直せてしまうので…。仕上げは単純にデジタルの方が執筆速度が速い、表現の幅が豊かになる、スタッフ間での共有がしやすいなどなど、メリットが山ほどあるからです。

第4コーナーは、キャリア道を駆け上がれ!!

Q13: 漫画家を目指すことに大きな不安を感じています。久住先生が漫画家を目指されたきっかけを教えてください!!

A13: 最初は親に絵を褒められたとか、ノートに描いた漫画を友達が読んでくれたとかそんな感じだった気がします。子供の頃は無敵ですから、当然軽率に漫画家を目指したものです。高校生あたりで現実が見えてきて、僕も同じく大きな不安から、一度、漫画家の夢を諦めてしまいました。しかしその後、漫画以外で好きなことや興味のあったことを色々やってみたのですが、やはり最終的には誰に見せるわけでもなく、一人でずっと漫画を描いていたので、漫画家を本気で目指そうと覚悟した、といった感じです。ちなみに未だに僕も大きな不安でいっぱいです。なので大丈夫だと思います。

Q14: 漫画を描く中でスランプはありましたか? そのような時期があれば先生はスランプをどのように乗り越えたか教えてください!!

A14: 描けない時は描けるようになるまで描きますし、それでも描けなければ寝ます。そのループを繰り返しているといつか描けるタイミングがきます。描き続けることが大切です。あと何故か〆切り近付けば描けるようになります。不思議と。

Q15: 編集者との打ち合わせをする際に新人時代に注意していたことはありますか? また、印象に残っている打ち合わせなどがあれば教えてください!!

A15: 最初の頃は本当に緊張していて、とにかく失礼の無いように、嫌われないようにとか考えていました。印象に残っていることといえば、初代担当さんに言われた「世界観の為の主人公を作るのではなく、主人公の為の世界を作ることが大事」という言葉がずっと今でも残っています。

Q16: 描きたいものがなかなか見つかりません……。描きたいものを見つけるためのアドバイスを頂きたいです!

A16: 古今東西さまざまな漫画を読んで「これなら自分の方がもっと面白く描ける!」と思った漫画を見つけてください。少なくとも貴方が描くべきジャンルが決まる筈です。

――最後に新人賞へ応募される方々への激励の言葉を頂きたいです。

まず漫画を完成させることができればその時点で貴方は天才です。完成させ続けることができればもはや人間ではありません。漫画家という生き物です。人間を捨てましょう。

今すぐ応募する
このページのTOPに戻る