ネームの極意を学ぶ
――同じ話でもこれを意識すればもっと面白くなる、というネームのコツを教えてください。
――“読みやすさ”のために、まず新人が心掛けるべきことは何でしょうか?
最初から小さいコマで始めていたり、背景を描いていなかったりで、どこに誰がどういう位置でいるか分からないページが多く見受けられます。なので、バストアップなど寄りのカットばかりではなく、できるだけ引きのカットを入れて、状況説明をしつつ進められるといいと思います。僕はいつも割と大きめのコマで始めているんです。大きめのコマに、どこで誰と誰がどんな位置関係で配置されているかが分かるように描いて、そこから少しずつコマの大きさを細かくしていき、一人ずつ表情や反応にフォーカスしていきます。展開に動きをつけたいときも、ページをめくるときに大きなコマを配置して、「意外なことが起こったぞ」と印象付ける構成にしていることが多いですね。
特に大きな出来事が起きるときは、できるだけめくる前のページのコマを段々と小さくするよう意識して描いています。その状態からページをめくったときに見開きになったりすると、大きな差が生まれるので「わっ、急にワイド画面になった」 という視覚的な驚きも生むことができます。



場所が転換する場面。1コマ目は引きのカットで背景・キャラクターの配置を説明し、次のコマからそれぞれのキャラクターにフォーカスする。コマが小さくなっていき、ページをめくると、大ゴマで重要な出来事が起きているのを印象づけている。奥先生のネームの極意が光るシーンだ。
あとは、作品の肝になっているシーンなのに、すごく小さいコマで済ませているというのも気になりますね。本当は一番描きたいであろうシーンだったり、面白いと思ってもらうために重要なコマだったりするのに、印象が弱くなってしまっていてもったいないと感じます。そういうところは、一番の肝だとわかるよう、見開きで大袈裟なくらいに表現してほしいと思います。確かに、コマが小さいほうが絵を描く範囲も狭いのでペン入れも楽になります。でも、大事なシーンだからこそ、楽をしようとせずに全力で描いてほしいです。必ず自分のためになります。
結局、一番大事なことって読みやすさだと思うんですよね。コマ割りをすごく凝って、色々な形にしても、読みづらくなったら意味がないです。できるだけ読者の立場になって、すんなりと読める工夫をしたほうがいいと思いますね。元々のアイデアが面白いのに、100パーセントに近い形で伝わらないのはもったいないです。最近の新人さんは良いアイデアなのに損をしていると思うことも多いので、とにかく読みやすさを意識してほしいですね。