田中一行先生特別インタビュー!!
『ジャンケットバンク』のキャラクターデザイン徹底解剖!!
5週にわたり真経津や現在対戦中の三角など豪華8名の秘密を暴いていく企画! あなたは、魅力の訳を“模倣”できるか――。
Round0
「キャラクターデザイン」とは?
個々について知るために、まず全体を捉える
――読者に愛される『ジャンケットバンク』のキャラクター達がどのように生まれているのか、デザインに共通して注意している点を教えてください。
――外見でその人らしさを表現するためは、特にどのようなことを大事にしていますか?
物語に登場する人物には一定以上の人間的な一貫性が必要だと思っているので、それを乱さず、より強化できるデザインを考えることに重点を置いています。例えば、「服になんのこだわりもなく、母親が買ってきた服を着ている」という状態も、それを良しとする人格があればダサくてもデザインとして成立しますし、逆に「人を刃物で切り刻むことを好む殺人鬼」がなんの説明もなくスナイパーライフルを持っていたら、どんなにカッコいい外見でも違和感があると思います。外見にはその人物の内面が反映されるはずなので、僕はそのキャラの性格やこだわりがわかってから外見を想像するという手順を踏みます。
――外見を想像する手順に関して、詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
具体的には、そのキャラが初めて登場する回のネームを完成させてから外見的なデザインを決めます。誰にでも有効な方法ではないとは思いますが、この手順であれば外見だけが特殊で内面が薄いキャラクターになってしまうことを避けやすいと思います。その後は、月並みですが「シルエットで誰なのかわかる」という点を意識します。よりわかりやすく言うと「3頭身にデフォルメしても誰かわかるようにする」ということが大切だと思います。いいデザインのキャラクターは誰が描いてもそのキャラだとわかるものが多いので、可能な限りそうなるように努めています。
――真経津も服装の色使いやアクセサリーなどが特徴的で、すぐ特定できるデザインをしています。色の組み合わせやシルエットはどのように決めていますか?
色に関しては、フルカラーではなくモノクロでバランスを考えてから配色を決めます。僕が色として使うトーンは61~64までのアミ点、ノイズとグラデーション2種が主なので、色の落差が出やすい配色かつバストアップで見たときに白すぎないように色を決めています。また、外見に過剰なリアリティを求めると地味なデザインになってしまうので、整合性よりもインパクトを重視します。例えば銀行員が榊や昼間のようなスタイルで許されるわけはありませんが、そんなこと言ったら地下で賭博をやってる銀行自体が許されるわけがないので、そういった退屈なリアリティは無視し、印象の強さやキャラクターの人格的なリアリティを優先します。

――その人らしさを大事にするデザインをする上で、服装など参考にするモチーフやモデルはいるのでしょうか?
キャラクター全般に言えることですが、服装自体のデザインは単純な僕の好みです。キャラが着たい服を選び、僕がデザイナーになるようなイメージなので、モチーフやモデルは特にありません。描き下ろしのようなパーティ衣装であれば、キャラクターが実際のブランドから何を選ぶかを考え、イメージに合ったブランドの特徴に寄せます。

次週、「Round1 真経津&御手洗のファッション徹底解剖!」乞うご期待!!
最も注意しているのは、「性格、人格よりも先に外見を決めない」という点です。キャラクターデザインというと絵的な要素だけを思い浮かべがちですが、そもそも実際の人間がそうであるように、キャラクターが身につけているものや髪型などは基本的に全て「そのキャラクターが選んで決めたもの」であるため、その人物の性格を知らずに外見だけを決め、なおかつそれらがバッチリ一致するという手順は非常に難しいものだと考えています。ただし実際の人物は「なんとなく」ファッションを選んでいる人が多いので、そこは何かしらのこだわりを持ってもらうことが肝要です。外見、特にファッションはおしゃれかどうかと同じかそれ以上に、その人物らしいかが重要になるものだと考えています。