週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 雪森寧々先生特別インタビュー

『久保さんはモブを許さない』『おさななななじみ』の雪森寧々先生にスペシャルインタビュー! 2作連続でラブコメを描き続ける雪森先生と作品担当に、作品から溢れる「らしさ」=個性の生み出し方を伺いました。

自身の個性を理解した“負けないため”の題材選びとは!?

――まず、最新作『おさななななじみ』(以下『なななな』)のテーマとして「幼馴染み」を選ばれた理由をお聞かせください。

雪森先生 より“距離の近い関係性”を描きたいと思ったのがきっかけです。私は作品においてキャラクター同士の「距離感」をとても大切にしているのですが、『久保さんは僕を許さない』(以下『久保さん』)の二人の場合、今の『なななな』の二人のような距離感に至るまで、どうしても話数が必要でした。
そこで、新作では最初から関係性がある程度できあがっている題材を扱いたいと考えたときに、幼馴染が良いのではないかと思いました。

担当  前作『久保さん』は、“ラブコメになる手前の段階”を丁寧に描いた作品だと思います。そのあどけなさやむずがゆさといった独特の空気感が読者の方にも好意的に受け取られていたんですが、だからこそ、ラブコメの王道シチュエーションの中で、「久保さんと白石くんにはちょっとハードルが高いなあ」というものがあった。先生としても、そこをやりたいという気持ちが大きかったと思います。

――なるほど。最初から狙いのあった題材選びだったということですね。

雪森先生 そうですね。
前作から2年間お休みを頂きましたが、新作を描くのであれば、前作を楽しんで下さった読者さんもまた楽しめるように『久保さん』で褒めて頂いた女の子の可愛さや空気感の部分を大切に、題材選びの際も意識しました。
ヤングジャンプは素敵な作品の揃った素晴らしい雑誌なので、「負けないためにはどうすればよいか」を常に考えます。自分が打点を叩き出せる可能性のあるジャンル、土俵で尚且つ自分のやりたいこと・描けることとのバランスを考えて題材を選びました。

――まさにご自身のやりたいことと、読者から求められているもの=雪森先生の強みを両立させた題材ということですね。それでは、いざ題材を選ばれた後に、これなら勝負できると確信した瞬間はありますか?

雪森先生 ありましたか?(担当の方をみながら)

担当 (笑)そうですね……瞬間というなら、第1話22ページ目、澄が優一に「よっ」と声をかけるシーンを読んだ時ですかね。ラブコメ作品って勝負できるかどうかの指標がすごく分かりやすくて、1話の中に読者が「良いな」と感じられる瞬間、持って帰れるワンシーンがあるかどうかが重要だと思うんです。それを踏まえてこの場面を読んだ時、クラスメイトがプライベートな時間に親密さを見せてくれる――この関係性はいいな、羨ましいな、とはっきり感じました。

――先生は前作のご経験もあり、ご自身の強みに対する理解がおありだと思います。では、まだ経験の少ない新人作家は、どのように“らしさ”を活かせる題材を見つければ良いでしょうか?

雪森先生 とにかく数を描くことと、客観視と自己分析ですね。
自分が描いていて楽しいなとか、苦しくない分野を探したり、また、自分では気づかない良さを認識するために第三者の声を参考にすることが大切だと思います。そして、“らしさ”を出すために「やらなくていいこと」を積み重ねていくことも必要だと思います。

――やらなくていいことを積み重ねる、とは?

雪森先生 漫画家さんは絵の技術、脚本、企画構成などいろんな力が必要ですが、新人さんは「全部できていなければならない」と思い込んでしまうことが多いと思うんです。でも、できないことよりも「自分には何ができるのか」に注目してほしいです。できないことに無理に手を伸ばすより、できることの純度を高めた方がいいのではないかと思います。「全部できなきゃいけない」と思い込んでしまうのは、もったいないです。
10年後できないことができるようになっていることに期待して、今は今見せられる長所を最大限みせられるようにと私は考えます。

新人編集者のまとめ!
新人作家が自分の「らしさ」を見つけるためのヒントは、“全部をやろうとしない勇気”にあるのかもしれません。自分の得意分野を理解し、“できること”の純度を高めていくことが、「らしさ」を見つける近道なのではないでしょうか。

来週はキャラクターから雪森先生の「らしさ」を大解剖します!

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