第11回 週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞 結果発表

佳作+審査員特別賞+月間ベスト賞 「ヤンジャン漫画TV」にてボイスコミック化決定! 夢中の食卓

32P

茸ノ子(23)鳥取県

賞金50万円

佳作30万円+審査員特別賞10万円+月間ベスト10万円

二宮裕次先生講評

今回1番好きでした。すごい表現ですね。説明も少なく簡潔、それでいて深みがあって理解できる。素晴らしい。洋館や動物、食べ物の描き方も素敵でした。後半のひっくり返しもほっこりしていてよかったです。一つ希望をだすなら、ラストはチビコの予想も越える結果や行動が見えたらより最高でした。

編集部講評

世界観は突飛ですが、主人公の抱えている感情が身近なものでスッと入り込めました。なんてことないことを丁寧に描くことができる、青年誌的な才能があると思います。絵も雰囲気があり、前作に比べて描写力も確実に上がっています。悪夢を食べるという行為の作中での意味付け、キャラの動機の描写も拘れるとさらに良くなると思います。

あらすじ

周囲の頼みを断ることができない甘木先生は、ペットのチビコの前では本音を漏らすことができる。ある日、夢の中にチビコが現れて――…。

佳作+初投稿賞 時空のマトリ

70P

田中数人(27)東京都

賞金33万円

佳作30万円+初投稿賞3万円

二宮裕次先生講評

設定過多で、戦いのシステムもわかりづらかったですね。ジャンキーというワードも能力者的な意味合いで使われていましたが、本当に中毒者でもあるので非常に読みずらかったのが難点です。場転して座って話し合い、というシーンが多かったのも気になりました。ですがこの作品の最大にして最強の魅力が主人公「砂」です。この男が憎めないいいキャラをしていたと思います。シンプルに砂を深く掘り下げた物語が見たいと思いました。彼ならきっと凡庸な設定にしても輝くと思いますよ。

編集部講評

途中で視点が変わったり、キャラが多すぎたり、能力が結局何なのか良く分からなかったり、ツッコミどころはたくさんありますが、セリフで楽しませようとする姿勢に好感が持てました。絵とキャラデザも作品の世界観に合っていて魅力的です。設定もりもりではない引き算の作りをしていけば、キャラクターの魅力がより際立つと思います。

あらすじ

長期に渡る薬物乱用により超人的能力を得た人間、“覚者”。覚者でありながら覚者を取り締まる麻薬捜査官“砂”は未成年の少女と出会い――…。

佳作+初投稿賞

70P

矢島歩亡(23)神奈川県

賞金33万円

佳作30万円+初投稿賞3万円

二宮裕次先生講評

画面にリアリティがあるのが魅力的でした。しかし逆に会話シーンや戦闘シーン、感情を吐露するシーンにリアリティが希薄なのがよくないギャップに映りました。矢島さんのやりたい展開にキャラたちを動かしたのが原因かなと思います。主人公がUMAに魅力を感じているのはわかりますが、他の動物にはどうでしょう?人間には?女性には?食べ物には?これらに面白く解答できる主人公であれば、物語も展開も勝手に面白い方向に進むと思いますよ。その時矢島さん必殺「画面のリアリティ」が最大に活きると思います。

編集部講評

主人公の狂気さと独特な絵柄がマッチして、終始不気味な雰囲気を感じました。不思議と最後まで読ませる力があります。ただ、パニックものとしては淡々とした印象を受けたので、「異形」を立てるか「追い込まれた人間」を描くか、どちらかに振り切ったほうが作品の面白さが際立つと思います。

あらすじ

16人の死傷者を出した謎の生き物、“艮(ごん)”。艮の正体を探るべく、記者の土田は取材しに行くのだが――…。

期待賞+初投稿賞 ヒモ男VS

52P

夏凪翔太(24)静岡県

賞金13万円

期待賞10万円+初投稿賞3万円

二宮裕次先生講評

実績のない新人さんが読み切りや連載1話を描く際の原則、基本は「10Pくらいまでに主人公のキャラ、物語の方向性を示す」だと考えています。今作に関してそれが示されるのが21P目でした。まだまだ無駄が多いということです。あと男性と女性の区別がつきづらいのも課題ですね。漫画にも身につけるべき基礎のようなものがあります。それを習得したら夏凪さんの表現力が活きてくると思います。

編集部講評

構成に工夫があり、コメディとしてのテンポもよく、絵柄とテーマのミスマッチも効果的でした。蛙化現象的なテーマもタイムリーです。狙いは明確ですが、最後の種明かしの理屈に力わざを感じてしまい、消化不良感がありました。刺激的で変な漫画的な楽しさはありましたので、画力の向上を頑張りましょう。

あらすじ

ヒモとして生きることに悩む、ヒモ男のユウキ。ヒモ男を卒業しようと決意した矢先に出会ったのがーー!?

期待賞+初投稿賞 トーテンタンツ

38P

古川楊也(21)東京都

賞金13万円

期待賞10万円+初投稿賞3万円

二宮裕次先生講評

画面…どうやって作ってるんでしょう? 美大出身の方かな。すごいです。勝負ゴマのパワー、特殊な表現が秀逸でした。ゾンビものって世の中にあふれているので、描くならその特殊性やリアリティのある知識みたいなものが必要かなと思います。ゾンビ作品を最低でも10-20は観る。身体が腐る原因や成分を勉強する等々。膨大な知識と研究が必要なものに手をだしてしまったかなと思います。この作品で描きたいのは姉弟愛かなと思うので、そこに最大パワーを割けるようにシンプルな設定から始めてもいいのかなと思いました。

編集部講評

画力が高く、キャラの動きの切り取り方がかっこ良いですね。ストーリー自体もまとまっていて十分な力を感じますが、課題は没入感でしょうか。姉の描写が細かく描かれていないので、他人事感が強めだったのが残念でした。表現力はあるので、主人公に共感してもらう見せ方、語り口を模索してほしいです。

あらすじ

死後、人を襲う“屍怪”を討伐するために設立された“葬儀課”。葬儀課きっての天才と称される姉に並ぶため、龍一は初めての任務に挑むが――!?

期待賞+初投稿賞 お空に花を灯しましょう

50P

ひさつねじゅんじ(20)兵庫県

賞金13万円

期待賞10万円+初投稿賞3万円

二宮裕次先生講評

文学的というか、いい意味でまさに読み切りという感じの作品でした。序盤のやりとり、中盤の仕掛け、それを受けて後半の主人公の反応。素晴らしいものを持っていると思いました。今後の課題は①会話の自然さ②キャラの深堀りでしょうか。まだまだ展開や設定に重きを置きすぎていると感じます。凡庸な設定でも輝く主人公と出会えた時、ひさつねさんの才能が一層輝くと思います。

編集部講評

「実は死んでいた」はよくあるオチとも言えますが、描き方に独特のリズムとオリジナリティがあるので新鮮に感じました。中盤以降の主人公の語り部分も文字量の多さを感じさせない、独特な魅力を持ち合わせています。ただ、絵で感情や状況を伝えられると更に良くなると思います。

あらすじ

暑い夏の日、自室でダラダラ過ごすひろくんと、外に連れ出そうとするまみ。部屋を出たがらないひろくんに、まみはとある“遊び”を持ちかける――。

期待賞 ミトさんはエイリアン

35P

雪太郎(17)長野県

賞金10万円

期待賞10万円

二宮裕次先生講評

アイデア先行で物語を作ったかな?という印象を受けました。最後のテレパシーを使う、使わないのひっくり返しのために作られた設定、キャラだなと。ミトさんが宇宙人であることの必然性も感じられなかったです。雪太郎さんの画力があれば、パワーあるキャラと出会えればど真ん中恋愛読み切りでも素敵に描けると思いますよ。たくさんの人たちと出会って魅力をたくさん集めてみてください。それを集約して削ぎ落してドリップして生まれた強いキャラに、普通の恋愛させる。すると勝手に普通ではない魅力的なお話になりますよ。

編集部講評

人物の絵に華があり、爽やかな読後感がありました。ただ、宇宙人という設定であることの必然性や、主人公がミトさんを好きになった理由の説得力があると良いですね。主人公に吃音の生きづらさがあるからこそ宇宙人を受け入れられる素養があったりするなど、細かい説得力を大事にして下さい。

あらすじ

女子を前にすると緊張してうまく話せない男子高校生・佐伯。どうしても彼女が欲しい彼の前に、宇宙人・ミトさんが現れて――!?

審査員総評

[BUNGO -ブンゴ-]の二宮裕次先生

複雑な設定、展開にする方が多かったので、今回は取材と勉強の大切さについて書きたいと思います。例えば僕が忍者ものを描くとするなら、忍者作品(漫画映画小説等々)を最低10-20は観ます。伊賀甲賀、真田十勇士、猿飛佐助あたりが有名だと思いますが、彼らが活躍した現地にいって写真を撮る、話を聞く、体感する。現代でいう「探偵」とも近い気がするので取材させてもらう。大きな組織と繋がりがあり、隠密に行動するという仕組みがFBI?や公安?に近い気がするのでそのあたりの書籍も読み込む、調べる。等々…。複雑な設定、展開にするなら最低でもこのくらいは準備してからプロットを書き始めた方がいいと思います。きっと作品に深みがでてくると思いますよ。皆さんこれからまたパワーアップすると思うので、次回作以降は誌面で読めるのを楽しみにしています!ひとまずお疲れ様でした!

YJ編集部

自分の強みを落とし込んだ作品が多かった回だと思います。その分、設定や展開で読者を裏切ろうとするあまり、キャラクターの魅力を十分に引き出せていないようにも感じました。思いついたアイデアを抱えて直ぐに走り出すのではなく、まず、自分が何を面白いと思っているのか。それはどうすれば読者に伝わるのかを考えてみてください。皆様の次回作、心から楽しみにしております!!

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