第12回 週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞 結果発表

佳作+月間ベスト+審査員特別賞+初受賞ボーナス 「ヤンジャン漫画TV」にてボイスコミック化決定! クローズトゥーユー

38P

千葉ちとら 東京都

賞金53万円

佳作30万円+月間ベスト10万円+審査員特別賞10万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

まず1P目で引き込まれました。特別な背景の効果もなく怜の表情がちゃんと「一点の曇りもない笑顔」に見えるのは見事です。怜のキャラクターには一貫した芯があり、それを表現する極端な行動の数々はオリジナリティがあってとても面白かったです。台詞のキレや演出、構成と今回の投稿作の中でダントツで成熟した作品でした。ただ、見開きの「何でお前らが俺の価値を決めるんだよ」という台詞が腑に落ちませんでした。インパクトはありますが、この作品で一番大きく主張する台詞は本当にこれでしょうか?

編集部講評

キャラ、テーマ、描写、構成の完成度が高い秀作でした。絵の表現力が高くて、読んでいて引き込まれました。キャラクターも一貫していて、たっていたと思います。二人の掛け合いも楽しかったです。

あらすじ

服装技術科に入学したミキはそこである男に出会う。ブーメランパンツ一丁で現れたその男はファッションデザイナーを目指すミキに、その男が着るための服を作ることをお願いする。彼との生活で服作りに没頭するミキだったが…!?

佳作+初受賞ボーナス 届かないぜ、ホタルさん。

50P

篠田旧(24)静岡県

賞金33万円

佳作30万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

全体としてまとまっていて、クライマックスの演出も綺麗でした。しかし、その構成が先行してキャラの行動がご都合的になっていたと感じました。特に、主人公が「届かなくていい」と思えるようなヒロインの説得力のある魅力や出来事がなく、主人公の視点で読んで楽しめませんでした。一方で、主人公の協力者ポジションのキャラクターは名前ビジュアル行動すべて特徴があり、とても面白かったです。こういった作品では主人公とヒロイン以外がモブになってしまいがちなので、素晴らしいと思います。

編集部講評

読切としてよく描けていたと思います。楽しそうな表情から物憂げな表情まで多彩な表情が描かれた作品でした。感情、表情がよく描けていて、面白く読めました。ロッティンのキャラクターが好印象でした。

あらすじ

主人公のヒロシは学園のマドンナ絹川蛍さんに惚れてしまう。親友のロッティンの後押しもあり、思い切って告白をしたヒロシ。連絡先を交換し、初デートのはずが誘われた場所は病院の裏手の川で…。

佳作+初受賞ボーナス 誘惑の花火

53P

生灯龍(16)三重県

賞金33万円

佳作30万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

導入が素晴らしかったと思います。インパクトがあり、同時に主人公を取り巻く状況が母親の台詞からよく伝わりました。またクライマックスで、主人公が死んだシーンを描かず、天使と接触することでそれを表現するのはとても面白いです。一方で、設定と展開を作りこみすぎて、それをストーリーとして自然に描けていないのが残念でした。重要な説明や主人公の過去を文字だけで済ませるのは作者の怠慢です。上手く構成を整理すればもっと面白くなると思います。あとオチは蛇足だと思いました。

編集部講評

セリフ回しや展開、演出に読者を楽しませよう、驚かせようといった意図を感じました。序盤、死神の女の子の色々な表情を見ることが出来て人間味を感じました。こうした人間を描こうとする姿勢もよかったと思います。

あらすじ

「不幸ものだ。僕は。」友達にも、親にも恵まれない主人公はある日突然、天使を名乗る女が見えるようになる。天使は傷ついた自分をいつも癒してくれていた…。それでも主人公の生活は暗いまま。「死にたい」と願ったその時、天使は…?

期待賞+初受賞ボーナス あばし

45P

横山恭奨(31)群馬県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

主人公のキャラの「芯」が見えませんでした。公衆の面前で死に体をさらしたことが何故人格を変えるほどのダメージになるのか、主人公は何を大事にしているのか、どういう価値観を持った人間なのか、もっと詰めていけばキャラの輪郭がはっきりして主人公の変化に説得力が出ると思います。主人公のみっともなさは、とても上手く表現できていると感じました。また全体的に読みづらかったです。1コマに入っている情報を減らし、状況を伝えるための絵や台詞を入れるようにしましょう。

編集部講評

ベタと王道を分けるのは、描写力だと思いますが、描写が丁寧なので王道に昇華されかかっている秀作な気がします。新しいアイディアは特にないですが、普遍的なテーマ・キャラ、丁寧な構成、良かったと思います。

あらすじ

あばしは公衆の面前でKOを食らったことにより、総合格闘技の道から足が遠のいていた。練習もせずに堕落した生活を送っていた彼だが、ある日TVに映った不良を成敗する動画配信者の姿が目に留まる。動画配信者の生活を夢見るあばしだが!?

期待賞+初受賞ボーナス 主人公降ろされました

49P

茶助(24)福岡県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

設定を上手く使えていないと感じました。ほとんどがただモテたいだけの主人公でも成立するような展開で、「物語の主人公を自覚した存在」という要素を使ってもっと遊んでほしかったです。そもそも設定がフワフワしていて、作者自身も設定をよくわかっていないように感じました。序盤に出てきた主人公が嫌われている理由が、クライマックスにつながってヒロインを際立たせる構成は素晴らしいです。だからこそもっと整理されてほしいです。

編集部講評

読切としてよくまとまっていました。導入ダラダラと設定の説明をするのではなく、すぐに本題に入っていたのがよかったと思います。キャラの表情が多彩で楽しい雰囲気をつくるのが上手でした。笑いのセンス、会話のセンスもあると思います。

あらすじ

俺の名前は葉山時宗、恋愛シュミレーションの物語の主人公。高校で様々な出会いを攻略し、クリア目前に迫ったこの瞬間、目の前に「プリンス」を名乗るライバルが出現!? 奪い取られたヒロインたちを取り返すために…。

期待賞+初受賞ボーナス つめはまた伸びる

24P

えびすみなみ(27)東京都

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生講評

よくわからない部分も多かったですが、表現や台詞回しが独特で、1P1Pが面白かったです。また要所の演出が綺麗で、作品がしまっていました。僕は爪に対して特に何かを思ったことはないですし、爪ひとつに対してこれだけ考えを広げて物語を想像できるのは、すごい才能だと思います。ただ、それらがまだ「人に伝える」表現になっていないと感じました。あまりにも主人公の感情だけで話が進みすぎているので、もっと客観的情報や出来事の描写を丁寧にしてほしいです。

編集部講評

爪と死相、ネイリストと死神の組み合わせがユニークでした。内容については描写不足のため、理解しづらい部分もありましたが、手の表現が豊かで感情がよく伝わり、場面ごとのキャラの心情を追いかけることが出来ました。

あらすじ

「あ、最悪。爪が割れた。」たったそれだけのことなのに今日はすべてがうまくいかない気がする。思い出したくないことを思い出したり、聞きたくないことが耳に入ったりする。一刻も早く爪を直さなきゃ…。

期待賞+初受賞ボーナス ベニクラゲのリスト

61P

画写健正(14)神奈川県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

森本大輔先生

主人公とヒロインのコミカルな会話劇でヒロインが生き生きしていて、終始楽しく読めました。強烈な特徴はないですが、こういった自然で生きた会話を描けるのは大きな武器だと思います。また、記憶をたどって情報が小出しに明らかになる展開には次を読ませる力がありました。課題としては、画面が単調で、特に終盤の別れのシーンは表現不足に感じました。コマ割りにメリハリをつけるだけで大分変わると思います。あとこれは好みの問題かもしれませんが、二人の関係には恋愛以外の絆の方がしっくり来ると思います。

編集部講評

コマを上手に割り、情報を分かりやすく伝えることが出来ていました。内容については、破綻していないことに加えて、最後まで読ませる力がきちんとありました。やや寂し目なハッピーエンドという読後感も良い塩梅だと思います。

あらすじ

ある日、ナオトはビルから飛び降りた少女と激突をしてしまう。少女は命を落としたが、ナオトにだけ彼女の姿が見えている。少女は一体なぜ、ビルから飛び降りることになったのか…。命を失った少女と共にナオトの捜査が始まる…!!

審査員総評

[カテナチオ]の森本大輔先生

どの作品も、クライマックスを盛り上げるよう構成が練られていて、上手くまとまっていました。一方で、それを成立させるために、キャラの行動に無理をさせている作品も多かったです。こういったことを防ぐのに重要なのは、『ちゃぶ台をひっくり返す勇気』だと僕は思います。物語をつくるとき、ある程度「こういう構成にしたい」とイメージしながらつくるのが多数派でしょう。そうなると、どうしてもキャラの動きがそれに引っ張られます。まったく引っ張られずキャラを描いて1P1Pを面白くしてその上で話を成立させるのは至難の技です。少なくとも僕はできません。なので、少しでも「これ無理やりだな」「違和感あるな」と感じたら、描き直しましょう。何度も何度もいろんな想像をして、キャラクターらしい行動になるまで考え直しましょう。どうしても上手くつくれないときは、そもそも全体の構成のアイデアからひっくり返しましょう! その勇気が作品を面白くすると確信しています。

YJ編集部

読切としての完成度というよりも、将来的に期待できる才能がたくさん集まった回だったと思います。 受賞した作品はどれも、まず第一に読みやすかったと思います。セリフの置き場所やコマの割り方、メリハリのつけ方、1P目のヒキの作り方など読者に対して、最後まで作品を読んでもらおうとする企てがうまくいっていたと思います。

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