第20回 週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞 結果発表

佳作+月間ベスト+初受賞ボーナス 「ヤンジャン漫画TV」にてボイスコミック化決定! いばら姫

35P

ひこジュン(19)東京都

賞金43万円

佳作30万円+月間ベスト賞10万円+初受賞ボーナス3万円

田中一行先生講評

読者に「リアルっぽい」と思わせる要素を描けている点が最大の長所だと思います。しかしリアル感がある一方で物語としては起伏がなく、起承転結の「転」で話が終わってしまっているのが惜しい所。次はドラマの中にリアリティを組み込めると良いと思います。

編集部講評

単に相思相愛で解決せずに、ティーンの葛藤を等身大で描いていて好感が持てます。感情の一方通行をテーマにした作品は恋愛ものであれば多いでしょうが、このアンビバレントな状態を明言しないまま描くというのは面白い試みかと思います。この“傷つきたくなさ”に殊更フォーカスすると言うのは非常に現代的な感性のように思えますし、良いテーマかと。 ただ一方で、現状の建て付けでは物語的なカタルシスは薄く、主人公が葛藤を抱えたままこんな自分に慣れるしかないのだ、という私小説的結論から一歩踏み込んだ表現が欲しいところではあります。内向的な主人公であっても、物語上読者が納得のいく変化(劇的でなくとも)を描けるか、という視点で次作に挑戦してみてください。

あらすじ

クラスでいつも寝ているあの子がとびきり可愛いことは私だけが知っている。けれど文化祭をきっかけに…。

期待賞+審査員特別賞+初受賞ボーナス 左下31番Caries4

50P

たけりょう(26)神奈川県

賞金23万円

期待賞10万円+審査員特別賞10万円+初受賞ボーナス3万円

田中一行先生講評

アイデアを盛り込んで行こうという気概が感じられ、かつ物語を構成する要素が粗はあれど押さえられているので発展性があると思います。全体的にコマが重要度に関係なく大きめなので、アイデアの質と情報の取捨選択に注力するとより良くなると思います。

編集部講評

宇宙人が通う歯科医、という入り口だけで既に秀逸な作品ですね。宇宙人周りの情報を教えてくれない展開も後半でしっかり拾ったりと、展開としても巧みで好感が持てます。画力・画面構成など発展途上ではありつつ、今後の作品も楽しみな作家さんでした。 ただ、この丁寧な造りをするのであれば解決方法が武力行使でなくても良かったのではないか、という気も。架空世界の職業ものを描く際、描写しないその世界の奥行きをどこまで丁寧に設計できるかという点も必要な素養の一つかと思います。読者に作品のどの部分を楽しんでもらっているか、そして入り口で提示した楽しみを損なう展開になっていないかなどをより深掘りして欲しいと思います。

あらすじ

新人歯科衛生士の私にとって毎日の仕事が未知との遭遇。ここが、宇宙人が人知れず訪れる歯科医院なことも含めて。

期待賞+初受賞ボーナス 表を見せて

36P

ひぬた(18)福岡県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

田中一行先生講評

全体的に漫画的な元気さが散りばめられていながら、テーマから逸れることなく最後まで物語が続く点は良いと思います。しかし情報の提示にかなり難があるため、読むために非常に大きな労力がかかります。大事な情報を整理し、目立たせる努力が必要だと思います。

編集部講評

ハイテンションなコメディでサクッと読めます。ただ、二次創作的というか、既に出来上がってるメインキャラの関係値に読者が置いていかれ気味な印象です。可愛らしい絵柄、幼馴染フェチコメ、ブラッシュアップできそうな要素が大いにあると思います。内容、展開に比して分量が多いようにも感じますし、またキャラ出しの順序がチグハグにも思えました。現時点では粗削りですが、まだお若いですし、今後が楽しみな才能ですね。

あらすじ

照れ顔フェチの鈴音。カップル同士の至極の照れ顔を拝むべく、幼馴染のソウと恋を勝手にくっつけようとするが…。

期待賞+初受賞ボーナス UNDEAD GIRL

18P

ぐまタスク(25)静岡県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

田中一行先生講評

物語を構成するために必要な要素がいくつも抜けてしまっている印象を受けました。ページを短くする努力も重要ですが、切り捨てていいものと良くないものの選別をしっかりやるとより良いものができると思います。

編集部講評

絵柄も可愛らしいですし、コンパクトな構成でテンポよく読ませますね。展開自体に意外性はそれほどないものの、それでもオチの演出を魅力的に描けています。その一方で作家さんの中の設定を省略しすぎているきらいがあるように感じました。 このくらい理性的であるならばゾンビである必要があるのか、主人公もこちらに殺意のないゾンビを執拗に狙う必要があるのか、などなど…。 極限状態での交流の中で芽生えた感情と、それに反して無慈悲な別種族、という設定はより盛り上げられそうなテーマかと思います。現時点でカタルシスの妨げになっている要因は何か、丁寧に考察して次作に繋げて欲しいと思います。

あらすじ

ある日目を覚ますとそこはゾンビだらけの街!出会したゾンビ女を殺すべく試行錯誤を繰り広げるも全く歯が立たないが…。

期待賞+初受賞ボーナス ナミマチメモリー

53P

むらシュンタ(27)東京都

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

田中一行先生講評

画力や画面構成は素晴らしいの一言。圧倒的に絵が上手です。しかし物語そのものはかなりチグハグで、「面白い漫画に出てきそうなシーン」の集合体に映ってしまっています。これだけ画力があれば絵の面ではどんな題材でも描けると思うので、次は自分が描きたいものをもっとわがままに描いてみるといいと思います。

編集部講評

絵造りというか、キメ絵に対して描きたいカットであることが伝わってきます。内容はストレートですが、逆に言うと独自性の薄さはネックでしょうか。内容もシンプルな割にやや過積載気味で、問題点とそれらを何で解決したかが不明瞭に感じました。あと一つ何かが足りないワナビーにきっかけを与えてくれるっぽい造りながら、技術面・精神面・そもそも大怪我と乗り越えなくてはならないハードルが多く設計されているので、おばあさんとの出会いが漠然と全部を解決しているように見えてしまいました。 対読者を意識した丁寧さを持てると次のステップに行けるように思えます。

あらすじ

プロサーファーを目指す試験で大怪我を負って入院した男は、リハビリ中の偏屈な老婆と出会う。孤独な2人は徐々に心を通わせるのだが…。

審査員総評

[ジャンケットバンク]の 田中一行先生

読者を楽しませようとする気持ちは、技術のレベルや経験値に関係なく読み手に伝わってしまいます。今回の作品達も、その気持ちがあるものと薄いもので二分されている印象を受けました。
初めて描いた作品でも、何十回と経験を積んだあとに描いた作品でも、人が読むものだという意識だけは忘れないように自分なりの面白さに挑戦して行ってください。

YJ編集部

新人賞では珍しく、全体的にストレートな造りの作品が多い印象でした。
近年はSNSなどで個人が継続的に作品を発表できるようになっているなどの影響もあり、読切としては設定が難解であったり膨大なページ数であったりといった対読者意識の薄い作品が新人賞では多く見受けられる印象でしたが、その意味で読者フレンドリーな構成は好感触です。
粗削りでありつつもバリエーション豊かで、若い才能の集まる賞でした。次回も意欲的な作品をお待ちしております!

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