第32回 週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞 結果発表

準大賞+月間ベスト賞+審査員特別賞+初受賞ボーナス 本誌読切掲載権&研究生契約権獲得! 「ヤンジャン漫画V」にてボイスコミック化決定! マイスター

49P

なかやまカンナ(19)栃木県

賞金73万円

準大賞50万円+月間ベスト賞10万円+審査員特別賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

好きなものへの温度差や、熱量の方向が心地よく書けていました。きっともっと読者を高い所に連れて行ける人だと思うので、描くのが大変な作風だとは思うけれど、その熱量を落とす事なく描き続けて欲しいです。

編集部講評

「姉弟関係」と「ダンスに対する熱量の差」という二軸の人間ドラマを高い解像度で描き切っていたところが好印象でした。姉の、弟を尻に敷いてしまう態度と弟の反発に手ざわりがあって、この対立の描写にパワーを感じました。そこを上手く表現するために、表情や仕草、会話の中の一瞬の間などを漏らすことなくかけているところに力量を感じます。 また、姉の「よいものに仕上げたいんだ」という熱量が、そこに熱を注いでいない弟にはしんどく映ってしまうズレも、両者の視点からその葛藤が描かれて面白かったです。弟が熱量を注げるものを見つけて、姉がそれを肯定するラストシーンもコマの寄り引きを駆使してドラマチックに表現されていました。準大賞にふさわしい作品だと思います。

準大賞+初受賞ボーナス 本誌読切掲載権&研究生契約権獲得! 裸生門

48P

ユキマサ(23)埼玉県

賞金53万円

準大賞50万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

今熱い社会問題を、演出で驚きを持って描けている点を評価したいです。その驚きが作ったハードルを、ラストにはぜひ超えて欲しかったです。

編集部講評

まず1P目、絵柄とキャラの仕草、背景とセリフで可愛らしい女の子のピュアな恋心が表現されていて心が惹かれました。が、ページをめくるとそこには不気味な扉絵が描かれていて1P目の期待を良い意味で裏切られました。読者の心をつかむ秀逸な冒頭だと思います。そこからは女の子の心の闇がどんどんめくれていって最後のページまで一気に読まされました。 自分の邪な行いを無理やり肯定していく女の子の心の動きにリアリティがあって面白かったです。27Pの「“いただきます”って感謝は~」のセリフはパンチラインですね。こちらも準大賞にふさわしい作品だと思いました。

佳作+初受賞ボーナス 阿姉阿姉

55P

かか(22)京都府

賞金33万円

佳作30万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

緻密な作画もいける魅力的な絵を描ける方。しかしながら、話の筋にやや寄り道が多く、骨格がこれだというわかりやすさに欠けていた印象でした。絶対にわかってもらうんだと言う気概を持ってストーリーを整理してみたらよくなると思います。

編集部講評

細かい装飾から背景の隅々まで丁寧に描きこまれている絵・村の成り立ちまで作りこまれた世界観に熱量を感じ、好印象でした。人間の信仰を利用して自分の嗜好を満たす村長の醜さが、「姉妹の再会」という美しい物語の対比で際立っており、より恐ろしく感じました。ラストシーンではサリナが満面の笑みで死亡していることで、サリナの希望に溢れた未来が失われたことが表現されていて、良い演出だったと思います。

期待賞+初受賞ボーナス 帰ってこいよ

8P

おかはるたか(19)石川県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

雰囲気がある作品でエモい描写ができています。8ページと言うのもあるのが、青春あるあるのテンプレに少々ハマり過ぎているようにも見えるので、次は作家性に一歩踏み出した強みを見せて欲しいです。

編集部講評

ツツジの蜜の知識を自慢げに話すことや思わず雀を捕まえようとする場面に“子供っぽい”行動への解像度の高さがあり、主人公の幼い精神年齢がわかりやすかったです。悩んで苦しむ主人公に対して、一足先に大人になった友人が、主人公と同じような衝動的な行動を言葉なく実行するシーンが二人の友情の深さを表現しており良かったです。自分の悩みを、一時的だとしても吹き飛ばしてくれる友人がいる主人公を羨ましく思ってしまうほど、二人の関係性を好きになる作品でした。

期待賞+初受賞ボーナス move on

50P

シトセなぎさ(27)京都府

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

人間が変わるのに、実際のところドラマなどなかったりします。作品からそういうシビアなリアルさは感じられるものの、些細な変わるきっかけというのを印象深く描くのも、また作劇なのかもしれません。ドラマティックなんかじゃない日常を、ドラマティックに見せて欲しいです。

編集部講評

学生時代の成功体験から生まれてしまった高いプライドと現在の自分の実力が伴っていないことで生じる行動の痛々しさにリアリティがありました。街中でバイト中にニュースを目にしたり、破れている自分たちのバンドのポスターを見たりすることがきっかけで、過去の自分を反省する姿に共感することができました。困ったとき、すぐに過去の仲間に連絡せず、まずは自分なりに取り組もうとしたシーンに主人公の音楽に対する真剣さの変化を感じて良かったです。

期待賞+初受賞ボーナス まるまるしかじか

33P

がみしょう(24)東京都

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

飄々として、掴みどころのない感じを上手く書けています。その作風やキャラに似合った物語や、描き方がどこかにあるはずなので、自分の強みを磨いて欲しいです。

編集部講評

女性キャラを家に誘うときの主人公のポージングやページをめくったら突然サンバの恰好をしているというサプライズなど、登場人物の細かい言動に読者を楽しませるこだわりを感じました。ドッペルゲンガーという設定が量産型大学生というなじみの深いキーワードと“唯一無二の個性とは何だろう”というテーマまで繋がる流れが秀逸でした。ただのギャグ漫画に留まらない、メッセージ性もある作品となっていたと思います。

期待賞+初受賞ボーナス 人形師の病

62P

おおこしたに(22)京都府

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

作品に於いて、何が魅力たらしめるかというテーマに筋の通った話をかけていました。より印象を強めるならば、やはり描写の踏み込みの強さは避けて通れないところだと思います。罪悪感の象徴の顔だとか、人形の顔だとか、踏み込めるところがあった印象です。

編集部講評

妹の死に目でも人形作りを優先した主人公の罪悪感、そこからくる苦しみを妹の幻影を通してわかりやすく表現できていたと思います。新たに出会った、自分の創作活動を肯定してくれる存在が 、自分の人形が原因で創作をやめていたうえ、命を落とすという過程が丁寧に描かれていました。その経験から 人形作りが主人公にとってさらに苦しく逃れられないものになっていく姿に恐ろしさを感じつつも惹きこまれました。

期待賞+初受賞ボーナス 明王孔雀

34P

きのかわだい(19)愛知県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

ポップな絵柄で、独特な作品になってるのは魅力です。しかし、独特であればあるほど、理解させる力も付随して必要になってきます。ヒキの絵を増やしてみたり、動き逃れや、フォーカスすべき所を丁寧に見せる工夫があるとより輝くと思います。

編集部講評

孔雀明王の羽毛や足の質感と装飾への描きこみ量、キャラクターの心情に伴ってデザインが変わるヘアバンドや迫力がでるような見開きの構図などに作品の独創性を高めるための創意工夫を感じました。 主人公がスランプに陥った際、先の見えない未来ばかりを想像するがあまり、自暴自棄のようになってしまう苦しみを言語化している場面に手触りがありました。作品独自の用語が多く入っている中でも、多くの人が感じうる未来への不安という苦しみを扱っていたことで、内容の理解がしやすかったのが良かったです。

期待賞+初受賞ボーナス 遺された愛はコーヒーとともに

16P

つきねぎ(19)愛媛県

賞金13万円

期待賞10万円+初受賞ボーナス3万円

赤坂先生講評

非常にトリッキーな漫画で、やりたい事もいいと思います。これは構造の問題で、何処で誰が何故どうしてを意図的に省いた分、初見では理解が及びにくい部分があるので、演出的としてスマートな明示の仕方があればいいと思います。

編集部講評

関係性や状況が明確にわからない中でも、キャラクターたちの表情と掛け合いから故人と仲間への愛情の深さが伝わってきました。短いページ数で、作品内の情報を絞って、一つのことを表現できている部分に作家さんの力量を感じます。遺骨を飲み干すという行動も一緒に生きていくという決意を示す演出として斬新なものになっていたと思います。

審査員総評

[【推しの子】](原作)・[メルヘンクラウン](原作)の 赤坂アカ先生

今回はやりたい事が前に出ているものの、伝え方に不足がある作品が多かった印象です。
自分の描いてる作品がどういうものなのか、それを理解するのは難しくて、私もそれが課題なので自戒なのですが、やはり自分の作品を知ることが大事だと思っています。
何が読者にどう伝わっているのか読者の目線で自分の漫画を読めるようになると、良い漫画が描けるのかなと思います。

YJ編集部

人間が目標に向かって頑張っている姿や、善意から生まれる行動などの美しい部分だけではなく、人間同士の価値観の違い・理想と現実のギャップに苦しむ姿や自分を優先することで生まれてしまう人間の醜い部分にも触れている作品があり、魅力的でした。今回の受賞作では人間同士のドラマをリアルに描いているという点を重視して評価させていただきました。

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