佳作+月間ベスト+初投稿ボーナス 「ヤンジャン漫画TV」にてボイスコミック化決定! 御国の羽々斬様
59P
賞金43万円
佳作30万円+月間ベスト10万円+初投稿ボーナス3万円
編集部講評
- プロ級の画力、アクションシーンとキャラ造形に感嘆しました。コマに描きこまれた情報量や、ポーズ・アングルからこだわりがつまっているのを感じます。特に、蹲踞をしながら余裕の表情でゲームを遊ぶヒロインが描かれた10ページ目のシーンは、神様でありお姉さんポジションでもあるヒロインの表現とシュールなエンタメ性が両立した、サービス精神にあふれるコマになっていると思います。また、44ページ、54ページの空中で巨大な銃を持ちながらのアクション、体幹と迫力を意識したポージングも見事でした。一方、課題点としてキャラクターの掛け合いが挙げられます。今作は、主人公とヒロインがそれぞれに一方的な感情をぶつけるような場面が多く、会話のずれを感じることがありました。主人公がヒロインのまだ見ぬ魅力を引き出すような対比と共通点の双方がある掛け合わせ、双方向の会話を意識して作品づくりを続けていってほしいです。
佳作+審査員特別賞+初投稿ボーナス 異類婚姻後日譚
45P
賞金43万円
佳作30万円+審査員特別賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
「ハーフ人魚」という特殊な設定を非常に有効に使えているいい作品でした。設定と感情とストーリーがきちんと連携しており、言葉を話さないキャラクターにも一貫性があるため何も躓く点がなく最後までスラスラと読めました。雰囲気があるだけでなく、ロジック面でもきっちりと予想外の展開が破綻なく描かれている上に、説明くさいセリフや表現が全く無いため初見で楽しめました。唯一注文をつけるとすれば、背景が省略されすぎているせいで状況が分かり辛い箇所があったので、絵をもっと丁寧に描き込んでほしいと思いました。
編集部講評
- 総合的な漫画力を強く感じる作品でした。短いページ数で、設定、キャラクター、作品のテーマ、オチの説得力の全てが高水準に説明、表現されています。7ページ目のようなキャラクター同士の関係性を魅力的に引き立てる掛け合いが、ストーリーの邪魔をしないよう随所に散りばめられていることも好印象でした。また、セリフのないコマの使い方も秀逸でした。32、33ページのオチにつながるシーンでは、表情と動き、効果的な演出で言葉以上の感情を表現し、主人公への共感度を高めていたように思います。一方で繊細な表現が、感情の高まりや盛り上げ不足感を与える面もありました。今後は大きく感情を表現した山場も意識した構成にすることで、より表現に幅のある作品になると思います。

期待賞+初投稿ボーナス よこちゃんのわからずや
49P
賞金13万円
期待賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
非常に綺麗にまとまっている恋愛モノで、細かい心情の動きがリアル感ある描写で描かれていると思います。全体が高水準なためラストの答え合わせの流れに若干の違和感があったので、そこをもっと自然にできればより良いものになると思います。
編集部講評
- 主人公の心の機微を丁寧に捉えた作品でした。「性別の理不尽さ」というテーマに主人公が至るまで、物語の約半分を使っている構成が印象的です。その過程において、過去の経験や日常の何気ない会話が積み重なり、一般論ではない“主人公自身の感情”として描けていた点が高評価でした。一方で、主人公の感情に焦点が寄りすぎたことで、物語が個人の内面に閉じてしまっている印象も受けました。前半で描いた感情をさらに盛り上げるため、山場となるようなイベントを発生させるなど主人公を揺さぶる展開を入れると佳作も狙えると思います。

期待賞+初投稿ボーナス 双葉
50P
賞金13万円
期待賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
どんでん返し系のアイデア単体としては成立していると思いますが、伏線の要素が非常に希薄なため展開が唐突すぎる印象を受けました。漫画で3つ以上の時系列を同時に行き来して物語を展開するのは非常に難易度が高いため、最初は重要な時系列は現在を含め2つ程度に抑えることをおすすめします。また、キャラクターが設定やプロット通りに動くことを強制されているような一貫性のなさが目立ちました。
編集部講評
- 背景の描写が丁寧で、作品全体の雰囲気づくりが巧みな一作でした。特に喫茶店でのシーンでは、会話が進む中で業務も同時に行われている様子が随所に盛り込まれており、時間の流れをリアルに感じ取ることができました。一方で、ミステリーとしての構成面ではやや作り込みが甘く感じられました。回想の中にさらに回想を入れない、登場人物の行動原理を明確にするなど、ご都合主義に見えない工夫があるとよいでしょう。

期待賞+初投稿ボーナス となりの白崎さんは変わっている
26P
賞金13万円
期待賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
非常にわかりやすく内容も突っかかるポイントはなかったのですが、裏を返すといい意味で引っかかるポイントも多くなかった印象を受けました。王道中の王道と言えるラブコメなので、他作品ともっと大きく差別化を図って欲しいというのが率直な感想です。
編集部講評
- 非常に堅実な男女の1対1ラブコメとして描けている点が高評価でした。ヒロインの変人キャラの設定も明確で、ビジュアル面においてもキャラの個性と可愛らしさが表現されており、どこを推せばいいのかが分かりやすい良いヒロインに仕上がっていました。ただし、その分キャラクターに独自性がやや乏しい点は今後の課題です。今作であれば、消しゴムジェンガの罰ゲームがもっとキャラの魅力を出す可能性を秘めていると感じました。大喜利のアイデアをブラッシュアップさせたり、表情をもっと豊かに描くなど、ハードル設定をもう一段引き上げて、更なるクオリティアップに期待します。

期待賞+初投稿ボーナス 吸血鬼の昼夜逆転生活
22P
賞金13万円
期待賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
特殊な設定に特殊な設定を重ねる事自体は良いのですが、実際に作中で起こる面白いエピソードにもっとアイデアが必要だと感じました。やりたいことはよく分かるので、次は設定的なアイデアだけで止まらず、本当にその設定の人物がいたら何を考え、何が起こるかを掘り下げるといいと思います。
編集部講評
- 吸血鬼ハンターと吸血鬼という対比関係を活かした掛け合いが印象的な作品でした。「昼間に起きてしまう吸血鬼」というアイデアもシュールで作品にうまく活かされています。しかし、昼夜逆転など「吸血鬼の伝説」にまつわるネタが多く、吸血鬼に詳しくない読者や興味のない読者には伝わりづらい内容になっていたのがもったいないです。作品の盛り上がりには、吸血鬼という属性だけでなくキャラクター自身の魅力がみえるとより評価も高かったかと思います。次回作ではキャラの属性と人間性が相乗効果になるような題材を模索してください。

期待賞+初投稿ボーナス ともみちゃんは勝ちヒロイン
22P
賞金13万円
期待賞10万円+初投稿ボーナス3万円
田中一行先生講評
短いページで無駄なくやりたいことができている作品です。視点が逆転するタイミングが少し遅く唐突に感じましたが、それを差し引いても意図した通りにひっくり返せていると思います。次は具体的なアイデア部分をもっと練られるとより良いものになると思います。
編集部講評
- 短いページ数で作品のホラー感を表現しきっており、構成力・表現力が光る作品でした。見開きごとにシーンが変化し、不思議なイベントが発生するテンポ感も良く、1P目の扉のおっとり鈍感系ヒロインのイメージが、ページをめくるごとに疑念に変わっていく表情変化も上手でした。一方で運の良さがどこからくるものなのか、人が怖いのかそれとも超常的な現象なのかが曖昧で、主人公の魅力として十分に感じられませんでした。運の良さが設定ではなく、キャラクターが生み出しているものだということを表現してほしいです。

期待賞 故郷の元へ
44P
賞金10万円
期待賞10万円
田中一行先生講評
基本的なアイデアは良いのですが、SF的な特殊な設定に対し細かい世界観や状況があまり練り込まれていない印象を受けました。やりたいことは伝わるので、次はできるだけ特殊すぎる設定を避け、余計なことを説明しなくて済む方法を探したほうが良いように思います。
編集部講評
- 比較的読者を選ぶSFジャンルにもかかわらずかわいい宇宙人のデザインや分かりやすいセリフなど、非常に読みやすくまとまっている作品でした。2P、6P、9Pなど、大きくコマを使った派手な展開にエンタメ的なサービス精神を感じ好印象でした。一方で物語のオチに関しては、SFにしては設定不足でコメディにしてはシリアスという、どの読者層を意識しているのか分かりづらい展開になっていました。読者層を想定して構成していくと、話のまとまりが生まれてくると思います。

期待賞 日廻り廻り
48P
賞金10万円
期待賞10万円
田中一行先生講評
ストーリーが非常にわかりやすくキャラクター性と配置が合っている漫画だと思います。難点としてはページ数に対して起こるイベントが非常に少なく話が進んでいないように感じるのと、周囲の人物がいい人しかいないのでもっと主人公の特異性を出さないと相対的に主人公がうじうじしているだけのように見えてしまうのがもったいないと思いました。
編集部講評
- メインキャラである2人に一貫したキャラクター性があり、ストーリーも直球で分かりやすい良作でした。8Pと15Pにあるキャラの対比を描いているコマは説得力があり、これからの展開に期待を感じさせられます。一方で主人公が能動的に動くイベント、主人公が周囲を変えるイベントが少ないことは、ストーリーに進みが無いと感じさせる要因になっていると感じます。主人公がテーマをしっかり体現することや主人公をイベントに絡ませてご都合展開に感じさせないようにすることなどの工夫をしてほしいです。
審査員総評

[ジャンケットバンク]の田中一行先生
全体を通して物語として完結している作品が非常に少なく感じました。読み切り形式なのでワンアイデアに頼る形になりやすいのはわかりますが、「余韻を残す」のと「オチが付いていない」のは全く別なので、もう少し起承転結を意識してみると良いかと思います。
YJ編集部
強みを明確に感じる作品が多かったものの、その魅力を引き出しきれてはいない印象でした。単発のアイデアだけでなく、キャラクター同士の掛け合いや構成の緩急、背景描写による説得力など表現方法は多くあります。強みを最大限出力するためにどのような工夫ができるのか、もう一歩の踏み込みが大事だと思います。
田中一行先生講評
非常に画力が高くサービス精神もあり、アクションにお色気と読者を飽きさせない努力を節々から感じます。一方で、キャラクター設定やストーリー、構成面では改善の余地が多くあり、特に状況設定が複雑すぎる上に説明が不明瞭なためすんなり読めない点はもったいないと感じました。