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YJC第2巻発売記念特集!! 数奇なる歴史

死刑執行人が見た死刑大全 禁秘の死刑目録

chapter1

ルーカス・クラナッハ
模様

「正義の番人であり、死神」と呼ばれる、死刑執行人が背負う十字架(前編)

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究極の権力「死刑」

刑罰の起源は、「復讐」である。現代の刑罰は犯罪者の更生を主眼としているが、古来の刑罰は自らが受けた被害や不正義と同じ程度の被害を相手に与えることで、いわゆる「お互い様」の状態に持っていくことが目的だった。よって、被害者が受けた不正義が大きければ大きいほど、犯罪者の受けるべき報復が増していき、特に重大な犯罪には、罪人の命を以って償わせることになる。こうして死刑は究極の復讐として誕生したのだ。

しかし、復讐の権利を個人に与えては、復讐が復讐を生んでしまう。復讐の連鎖を断ち切り、加害者と被害者を最小限に抑えるため、時の政府は犯罪者に対する復讐の権利を国家で独占した。そして市民の命を奪う死刑は、国家が国民に対して持つ究極の権力の象徴となったのだ。

その究極の権力を執行する者こそ、サンソン家に代表される死刑執行人だ。彼らは死刑執行を通じて、不正義を正し、正義を実現する国家の要職であった。サンソン家の処刑剣にも描かれていた「正義の女神」は、公平を象徴する天秤と生殺与奪の力を表す剣を持つが、この姿こそ、権力と正義が持つ究極の力であり、死刑執行人のあるべき姿であったのだ。

変遷する「死刑」のかたち

近代以前の死刑は、現在のものと違い「どのように死んでいくか」が重視されてきた。あまりに大きな不正義には、ただ死ぬだけでは復讐の釣り合いが取れないと考えられたのだ。この釣り合いをとるために様々な刑罰が考えられたのである。多くの死刑は残虐なだけで単純に見えるかもしれない。しかし、綿密な準備と十分な技量、そして何よりも、目前の惨劇に動じず、冷静に処刑を執行できる強靭な精神力を持つ真のプロフェッショナルでなければ死刑は成功しない。死刑執行人たちは、正義の執行者であるという強烈な自負と誇り、そして義務感と自制心を併せ持つからこそ、数々の残酷な刑罰を執行することができたのだ。

ルーカス・クラナッハ画
サンソン家の「処刑剣」にも描かれる。権力を象徴する剣と公正を象徴する天秤を持つ。
動物刑
突き落とし刑
火刑
動物刑

人の尊厳を奪う刑罰。猛獣の扱いには執行人にも危険が。

突き落とし刑

「神に呪われた存在」となる、古代に生まれた重大犯罪処刑法。

火刑

死後の「魂の救済」をも否定する、かのジャンヌ・ダルクを処した刑。

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