逮捕された犯罪者は、パリ中央のコンシエルジェリなどの牢獄に連行され、取調べと裁判を受け、グレーヴ広場で処刑される。身分社会では、容疑者・罪人の処遇も身分により変わった。
まず、コンシエルジェリ内では3種類の待遇があった。貴族であれば、最高級の待遇。いわゆるブルジョワと呼ばれる裕福な平民はピストールという雑居房で過ごす。そして、金を払えない平民はペイユーと呼ばれる雑居房に放り込まれた。同施設内で行われる「取調べ(審問)」でも、身分による扱いの違いは如実だった。
死刑判決が下るとサンソン家の仕事の始まりだ。大抵の場合翌日には死刑執行の命令文書が発行され、その翌日に執行される。
処刑においても、貴族と平民では様々な待遇の違いがあった。処刑方法でも貴族は斬首刑、平民は絞首刑や車裂き刑と差別がある。そして前者の場合、遺体は比較的速やかに家族の元に返されるが、後者の場合は長期間、晒し者になるため、家族の下に返還されても腐敗しているものが殆どだった。
つまり、身分が違えば、より苦痛と屈辱の大きな処刑が下される。だが、サンソン家には処刑台で密かに罪人を皮紐で絞殺する技があった。「レテントゥム」と呼ばれるその技は、当時最も残酷な「車裂き刑」で行われ、死刑囚を本来の苦しみから解放する温情措置だった。それが、心優しいサンソン家の流儀でもあった。
- 死刑囚は馬車や荷車に乗せられ、グレーヴ広場へと移動。重大な犯罪では、教会の前に跪き、神、国王、祖国に許しを請う「アメンド・オノラーブル」という刑罰が科せられることもある。
- 元は王宮であったが、1391年から監獄として機能し始める。最高裁判所に隣接しており、革命期には多くの命を断頭台に送った。
- 死刑判決が下ると、翌日には死刑執行令発行、その翌日に死刑執行。サンソン家は直ちに助手を処刑場に派遣し、処刑台の設置を開始する。
- レテントゥムを下すシャルル『イノサン』第17話