コミックス累計一億部突破記念!「キングダム読書感想文コンクール」結果発表!!

銀賞

『失い、受け継ぐ』
29歳 女性

好きなキャラ:信

私がキングダムの漫画を読み始めたのは、2023年の12月。義父が亡くなったのも、2023年の12月だった。
実写映画を観てキングダムに興味を持ち、アニメを観て、その面白さに夢中になった。夫と一緒に夕飯を食べるのも惜しいくらい、続きは、この先の展開は、と話数を進めた。

そしてアニメをシリーズ4まで観終わり、あれよあれよという間に漫画を手に入れていた。あっという間の出来事であった。最新刊まで70冊もある漫画を一気に購入したのは、今までの人生で初めてのことだった。
また飛信隊に会える、信や羌カイ達の活躍を見れる、アニメでは描かれなかったところも楽しめる──一気に読みたいと思い、ワクワクしながら週末を待った。

そして週末が来る前に、大好きな義父の凶報が入った。旅行先での事故死だった。まさかそんな、と最初は信じられなかった。先週まで本当に元気に仕事をしていたのに。
それからは、怒涛の日々が続いた。ショックで放心する義母のケア、葬儀の手配、関係者への連絡など。義兄と夫と私で分担してするべきことをした。キングダムの漫画を読む余裕が、その時は残念ながらなかった。

2週間が経ち、ようやく一息ついて、気力と体力を取り戻した時、キングダム第1巻を手に取った。漂の死に打ちひしがれる信を見て、涙が止まらなかった。大切な人が亡くなるシーンを見るには、まだ早かったかもしれないと後悔した。ページを捲る手がひどくゆっくりになる。だが、信は立ち上がった。有に殴られ、悲しみが癒えぬまま足を動かした。私は、もう少しだけ読もうと2巻を手に取った。
気付いたら、16巻まで読んでいた。尾到が死んで、王騎将軍が死んだ。信にとって大切な仲間や、お世話になった、憧れの人がいなくなった。私も平常心ではいられなかった。

義父は、本当に素晴らしい人だった。自身の会社では代表取締役として沢山の人に慕われ、愛されていた。情に厚く、田舎から上京して右も左も分からない未熟者の私を家族として迎え入れ、とても気にかけてくれた。私が会社を辞めて独立すると言った時は、たくさんの知人に私を紹介してくれた。奨学金返済の援助までしてくれた。いつも笑顔で、私の健康を気にかけてくれた。いつか必ず、恩返しをするのだと思っていたのに。

キングダムを読みながら、同時に自分の中でやるせなさや後悔、自責の念が渦巻く。ひどく、辛い。信は私以上に辛い目に遭っているのに、どうして何度もまた立ち上がることができるのだろう。そうして私は思い出した。尾到が死ぬ前に、信に「大勢の仲間の思いを乗せて天下の大将軍にかけ上がるんだ」と言った言葉を。大切な人が死んでも、その思いは消えない。思いを抱いて、前に進めと。
あぁ、そうか。そうなのだ。死んで、義父とはもう話をすることも、笑い合うことも、一緒にご飯を食べることもできなくなった。でも、義父がいつも人の為にしてきた行いや、家族を第一に考えるその思いや、それに対する感謝の気持ちまで消えたわけではない。私の中に残り続ける。そうして私も、その義父の思いを受け継いで前を向き、進めばいいのだ。

今はキングダムを、最新刊まで読み終えている。この漫画に出会えて良かったと心の底から思う。大切な人の死は、辛く悲しい。でも、その人は心の中でずっと生き続ける。その人が私の為にしてくれたことを、今度は私が、他の誰かにしてあげたい。そうして思いの火を繋いでいきたいと、今なら強く思う。
そう思わせてくれたキングダムという作品に、心から感謝したい。信たちの戦いは、まだまだ終わらない。作品をこれからも応援しながら、私もしっかりと前を向いて、自分の火を大きく輝かせていきたいと思う。

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