左手から放たれた3Pシュートが決まると、派手なジェスチャーを交えながら吠える。富永啓生が、パリオリンピックのコートに立つ。人々を魅了する長距離砲が決まれば、興奮も増す。
「舞台が大きくなればなるほどモチベーションも上がりますし、気持ちを表に出すことは増えてくるかなと思います」
3人制バスケットホールで出場した3年前の東京オリンピック、昨年のW杯の両大会でその特異な才能を示してきた。パリオリンピックで日本がさらなる躍進を果たすには、富永の活躍が必須だ。W杯を経て経験値を増した日本代表が、強豪ばかりとの対戦となる同オリンピックでどこまで伍して戦えるか。富永は「1段階、2段階レベルアップできた自分たちがオリンピックでどれだけできるかすごく楽しみ」だと言う。頼もしいことに、並の人間ならば足がすくんでしまいかねないような世界の舞台でも、富永は緊張をしないのだという。
「オリンピックに3人制で出た時も、試合が始まるまではちょっと緊張しましたけど、始まってしまえばまったくそういうことはなくやれましたね」東京オリンピックでは新型コロナウイルス蔓延のために、無観客でのプレーを強いられたが、今回のオリンピックでは周りを多くの観客に囲まれる中で戦う。「観客がいる中でこういうトップレベルの大会でプレーできることが本当に嬉しいですし、ブーイングなのか声援なのかわかりませんが、観客と一体になってやれるというのは楽しみです」
富永が吠えることがあれば、それは日本代表は波に乗っているという証拠だ。
富永啓生 PROFILE
2001年2月1日生まれ。愛知県出身。
188cm81kg。SG/PG。
桜丘高―レンジャー・カレッジ―ネブラスカ大。
3年目の今季はエースとしてカンファレンス3位に終わるも、NCAAの3Pコンテストで優勝。7月5日にNBAインディアナ・ペイサーズと「エグジビット10」契約に合意。