学生時代などにはバスケットボールだけでなく、例えば陸上競技のウサイン・ボルトや水泳の北島康介といった選手らが戦い、オリンピックという世界最高の舞台で頂点に立つ姿を、憧れの眼差しで見ていた。
「北島さんなどはカリスマ性というか、印象に残るフレーズを残したり、オーラがあってかっこいいなというイメージがあります」
2021年、そうした過去のオリンピックをいちファンとして見ていた比江島慎が、東京大会に出場した。だが、強豪相手に太刀打ちできず全敗したことで、子供の頃から夢見ていた舞台に立ったことの達成感は、薄まってしまった。「東京オリンピックの後、(日本代表は)辞めるつもりだったんですけど、悔しさのほうが勝ったので、続けようと思いました」
昨夏のW杯ではチーム最年長ながら、主力の1人としてパリオリンピック出場権獲得に寄与した。世界大会で「1勝したい」という思いで東京後も日の丸を背負い続けたことが、報われた瞬間だった。パリオリンピックは自身の日本代表生活での「集大成」になると語る比江島。自らが以前の世界大会でのように悔いを残さないことはもちろんのこと、日本にとって「未来につながるようなバスケットができたら」と静かに闘志を燃やす。昨年のW杯、ベネズエラ戦の終盤、次々と得点し逆転勝利の主役となった。3Pを決めた後に見せた「セレブレーションポーズ」は、大会後もテレビ等で繰り返し流れる象徴的な場面となった。「完全に高ぶっちゃっていました。あれは僕じゃないです。別の人格がやっているので(苦笑)」
人見知りの比江島が、その試合を恥ずかしそうに振り返った。しかし、比江島が照れるそのポーズがパリでも出るならば、日本にとっては吉兆でしかない。「まあ...、そうとも言えますね(笑)」
比江島慎 PROFILE
1990年8月11日生まれ。福岡県出身。191cm88kg。
SG。洛南高―青山学院大。
2013年アイシンシーホース三河(現:シーホース三河)に入団。その後海外挑戦を経て2019年より宇都宮ブレックスでプレー。W杯でも日本代表の躍進に貢献した。