構成・文/市川光治(光スタジオ) 撮影・文/名古桂士(X-1)
4年前のAOZ大会、女子日本代表が得た結果は、男子とは対照的なものだった。日本、オーストラリア、中国が勝敗で並びながらも、ゴールアベレージでロンドンの出場権を逃してしまう。女子のパラリンピック連続出場は7大会でストップすることになった。
「先輩たちが築いてきた歴史を途絶えさせた…。自分の不甲斐なさを感じて、自分を責めました(上村)」
1988年のソウル大会から日本代表として出場し、世界の得点王になったレジェンドが味わった最大の挫折。それでも上村は顔を上げて前へ進む道を選んだ。バスケに集中できる環境を求めて福島に転居。好きなお酒やスイーツを断ち、厳しい食事制限でもう一度身体から作り直してきた。
「今度こそ、ちゃんと後輩たちにバトンを渡したい。若い選手にパラリンピックの舞台を経験させたい。コートで死んでもいいと言う位の気持ちでやります。今回はそこまでやっても足りないのではという危機感がある(上村)」
昨年の世界選手権の成績によって振り分けられたアジア・オセアニア地域の女子の出場枠は、前回よりひとつ減ってわずか1。これを日本、オーストラリア、中国の3カ国が総当りで奪い合う今回のAOZは、女子車イスバスケ史上最も厳しい予選となっている。
バナJAPANも厳しいAOZの戦いを想定してチームを作り上げてきた。今年2月の大阪カップでは、オーストラリア、カナダ、イギリスを破って優勝。その後の海外遠征でも、北米やヨーロッパの強豪との連戦で経験を積んだ。
「ロンドンに出られない悔しさを味わって、私たちは変わったと思います。バナJAPANには、それぞれに強みを持つラインナップがあるのですが、選手それぞれが自分のコートでの役割を全うして、チームに貢献したいとプレイしています。全員で戦うという意識でチームがまとまっています(網本)」
「前半に多少のビハインドがあっても、後半で逆転できる地力がついてきました。チームとしての骨格がはっきりして、どう戦うべきかが明確になってきたと思います。このAOZを勝ち抜かなければ、世界への挑戦権は手に入らない。私たちは世界の頂点を目指してAOZを戦います(橘HC)」
チームとしての完成度には、エースもHCも手応えを感じている。そこに最後のピースとしてもう一人のエース、男子代表の藤井新悟の妻・藤井郁美が3年ぶりに戻ってきた。長男を出産して1年も経たない時期での緊急復帰だ。
「日本代表として夫婦でロンドンに行くという夢は叶いませんでした。でも、今度は長男も一緒に3人でリオへ行くという新しい夢ができました。橘HCとは所属するSCRATCHでもずっと一緒にやってきました。橘HCのバスケで世界に行きたい! 今回の私たちはチャレンジャー。初心に帰って思い切りぶつかっていきます(藤井)」
チームのキャプテンを務める平井美喜はAOZにかける思いを熱く語る。
「4年前の悔しい思いをバネにバナJAPANは成長してきました。“絶対にリオの舞台で君が代を歌おう!”とチームがひとつになっています。チーム全員でリオの切符をつかんで、お世話になったたくさんの方々に恩返しがしたい。この重要な大会をホームコートで戦えるのが、とても楽しみです。自信を持って、自分たちのバスケを見せたいと思います。応援、よろしくお願いします!(平井)」
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三菱電機
2015 IWBF
アジアオセアニアチャンピオンシップ千葉
- 競技日程:
- 平成27年10月10日(土)~10月17日(土)
- 参加国・地域:
- 男子12か国・地域 女子3か国
- 大会会場:
- 千葉ポートアリーナ 千葉市中央区問屋町1-20
- 大会公式HP:
- http://iwbf-aoz-chiba.com/