新人賞

#076 シンマン賞結果発表

[ストーリー部門]

準入選+月間ベスト+初投稿賞

アテテュットガス
61P
中永圭信(24) 神奈川県
賞金63万円
準入選50万円+月間ベスト10万円+初投稿賞3万円
笠原真樹先生
作画のクオリティーが非常に高く、F1を描きたいという熱意を感じる作品でした。読み切りとしての役割と第一話としての役割を兼用させようとするあまり、父親と息子のどちらの視点で読めばいいのか曖昧になってしまったところが勿体無かったです。ストーリーも一本調子なので、せめて扉絵は父親にしないと、読者に結末を見透かされます。
編集I
水分補給システムをギミックに持ってきたのは意外性があってよかった。根性論だけでは追い抜けない世界に対しての説得力が足りなかった。父の過去を経ての息子の話メインの方が、漫画として描きやすかったように思う。あまりにプロローグ的。ただ、レースものを描けるのは貴重な才能です。
編集K
重厚でスピーディーなマシン描画も圧巻だが、それと対比的な人物デザインが実によくマッチして、漫画らしい魅力ある画面になっていたと思います。キャラクターを突き動かす信念もよくセリフに落とし込まれていて、ベタな話ではあるけれども、感情を高めるシーンへとしっかり昇華できていたと思います。息詰まる攻防の演出にも心臓描画などを使い、効果的に緊張感を高めていました。全体的にも車のシーンと人間ドラマの比率も絶妙だったように思います。何より描きたいことへの熱量が高く、それが心を打つのだと思います。題材や企画を選び、より多くの「今の読者」にぶつけるべき次回作を期待しています。
編集N
モータースポーツを真正面から描いた新人作品とかいつ以来か。大事にしていただきたい才能だと思います。話が大味ですが、マニアックすぎないのも読み切りとしてはとてもいいです。

佳作+初投稿賞

The G.O.A.T
42P
滝幸喜(27) 東京都
賞金33万円
佳作30万円+初投稿賞3万円
笠原真樹先生
カメラや演出、心理描写は丁寧に描かれています。しかしヤギを捕まえる特訓のくだりで、オーソドックスなバスケ漫画からの良い意味での逸脱を期待していたのですが、特訓をしているコマも少なく、特訓内容に加え、一晩にして終わっているように見えるので、この短時間にヤギを1匹捕まえただけで、急にフィジカルが強くなる説得力がありません。キャラ絵ももう少しアクが抜けると良いと思います。
編集I
展開にいろいろツッコミどころは多いが、難しい構図に挑戦するなどバスケに対する熱量は感じる。シーンの見せ場も作る努力をしている。主人公のカッコよさ、華、色気を自分なりにもっと追求してほしい。
編集K
強弱の効いたコマ割りや見せゴマをうまく使うことで全体を非常に読み易く構成してくれていると思います。ただ、キャラについては主人公キャラが「変わっている」のか「変わっていない」のか中途半端な印象で、それはマネージャーにも言えるかと。個性を持っている、としている割には個性に乏しく、その結果、ストーリーラインを退屈なものにしてしまったように思います。

佳作+初投稿賞

次郎重忠討つべし
60P
山内涼太(27) 東京都
賞金33万円
佳作30万円+初投稿賞3万円
笠原真樹先生
作画、ストーリー展開はオーソドックスですが実直な作品でした。キーアイテムである蟹の使い方もうまいのですが、「センゴク」など既存の時代物との差別化を計るためにも、最近で言うと「引っ越し大名!」「決算!忠臣蔵」など独自の切り口があると良いと思います。このテーマならば個人的には和田小太郎義盛と北条五郎時房の2人をもっと絡ませた方がよいのではと思いました。
編集I
ここまでのページ数を使って焦点が定まっていない。和田は不要でした。主人公たる人間が何も動いていないところに根本的な問題があると思います。
編集K
次郎重忠が討たれるシーンは描くべきなのでは。和田義盛と次郎重忠の戦いも面白くなりそうだったのにフェードアウトして終わってしまった。おそらく、作者としては弟君の葛藤や成長を描きたかったんだと思うけど、それも次郎重忠の戦いを通しての生き様(死に様)を見た弟君が何を思うかだと思うので、次郎重忠の戦いっぷりはしっかり描いてほしかったです。
編集K
それぞれのキャラに信念があり、セリフや見せ方にも工夫があり面白かったです。人間と人間の間のコマも効果的に描けていたように思います。60Pは長いけれども、甲冑の戦闘シーンが大変な題材にもかかわらず、描き切る熱量も好印象です。惜しむらくは、60Pを使って、成長した五郎の魅力不足。史実優先にしたのかもしれませんが、物語的には喰い足りないと思います。

期待賞+初投稿賞+審査員特別賞

塔をたつ
61P
夢見ムシマル(21) 東京都
賞金18万円
期待賞10万円+初投稿賞3万円+審査員特別賞5万円
笠原真樹先生
少し荒削りですが、キャラ造形、ストーリー構成に一番伸びしろを感じました。 キャラ数も最小限に抑えられていて、それぞれ魅力的です。しかし61ページもあるので、語り口の緩急と、見せ場はもう2つくらいは必要だと思います。背景は あえて淡白にしているのだと思いますが、その分説得力がありません。特にファンタジー要素の強い作品は背景が大切です。せめて名刺代わりとなる1ページ目はもう少し丁寧に描くと、読者の信頼感が増すでしょう。
編集I
溜めて溜めて最後に開放するカタルシスは作れているが、ページ数はやはり長すぎる。世界観、建築技術(能力)、敵国の意図、などもろもろ設定の緩さが悪目立ちしてしまっている。
編集K
いろいろな点は稚拙だけれども、心揺り動かされる人間性とドラマを描けていた。塔の閉鎖世界という設定を活かし、登場人物をしっかり絞り込み、技量に合わせてテーマを描き切っていたと思います。屋上のシーン、埋葬のシーン、崩壊のシーンなど、様々な情緒的シーンにも絵的なアイデアが散りばめられていました。
編集N
シンプルな世界観ながらセリフセンスのまっすぐさは気持ちよく届くものがあり、思いのほか面白く読めました。引き算しすぎな状態で武器がないので、一つ一つ課題をもって強化していきましょう。

期待賞+審査員特別賞

俺が少女漫画家になりたくて何が悪い!
35P
毛利茅夏(28) 福岡県
賞金15万円
期待賞10万円+審査員特別賞5万円
笠原真樹先生
着想は面白かったです。キャラの仕草、小物の使い方もうまいのですが、主人公たちの出会い、蓄積のない第一印象から描いてしまっているので関係性の構築にページロスがあります。その結果、後半は窮屈になってしまいました。キャラとシーンの取捨選択、全体的な構成力が課題ですがテーマを貫いたところに好感が持てます。
編集I
せっかく境遇が似た二人が表面的会話でしか接点を得ず、深いところでは影響を与え合っていないので、非常に散漫かつ浅い印象を受けてしまった。過去回想の多さも気になりました。
編集K
親との衝突と少女マンガのヒロインとしては似つかわしくないけど心惹かれてしまう猫宮さんとの出会いがどう親との関係の克服と作品に影響を与えるか、じっくり描くぞ…ってところでシメに入ってしまい、用意したテーマはよかったのに消化不良でもったいないです。
編集K
パワーがあり、魅力的なキャラ三人。彼らをすごくざっくりと盛り付けてあり、関係性も「?」なところがあるのに、好感度がしっかりある不思議さを感じました。絵の描き分けという観点からも、ストーリーとしての結末という観点からも、作中に登場する少女漫画というギミックを活かせなかった印象です。構成についても、読者が知りたいタイミングとは違うタイミングで主人公の過去などを入れてくるので非常に説明的に感じます。

[ショート部門]

受賞作なし。審査員をアッと唸らせる短編漫画をお待ちしています!!

#076 審査員リビドーズ笠原真樹先生

1人で漫画を描く作業は大変ですよね。なかなか量産はできません。ごく稀に客観性を必要としない天才もいるのですが、それ以外の人はネームの段階、打ち合わせなどで他人に読んでもらい、ブラシュアップを重ね、少しずつ客観性を身に付ける事が大切だと思います。今回は惜しい作品が多かった印象です。足りないものはそれぞれ違い、意外性や捻りがなく一本調子な作品、読者への配慮が足りなく独りよがりな作品、読者に委ね過ぎる事は新人の読み切りにとっては危険です。読者の気持ちを掴んでから振り回せたら最高だと思います。お互い頑張りましょう。

編集部総評

荒削りながらもいろいろな方向性の作品が見られた回でしたが、読者からどう見えるのかという視点が弱い作品も多く見られました。まずは熱量を持って作品作りに臨み、しっかりとやり切ることが大切ですが、プロとしてステップアップしていくためには、読者視点でどう受け取られるのか、今の読者が面白いと思えるポイントがどこにあるのかを掴むことが重要となります。

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