週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 雪森寧々先生特別インタビュー

ヤングジャンプ新人漫画大賞 第7回審査員の雪森寧々先生に特別インタビュー
雪森先生と担当編集が語るのは『久保さん』の“届け方”。
作品誕生秘話から聞こうと思ったら、既に誕生の危機が…!?

chapter.001 雪森先生は担当編集を許さない…?

ボツから始まった『久保さん』。どうやって大ヒット作に?

――はじめに雪森先生の新人時代・デビューまでについてお聞かせください。

雪森先生 私は編集さんにスカウトしていただきました。絵自体はずっと描いていたのですが、
pixivさんでイラストを載せていたら周りの方々に「これはどういうストーリーなんですか?」というお声を頂くようになって…。そうして少し描いてみた漫画を編集さんが見つけてくれました。

――非常に今どきな経緯かなという形ですが、当時、イラストレーター・漫画家として影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?

雪森先生 漫画家としての影響は、羽海野チカ先生ですね。すごく影響受けたかなと思います。

――確かに扉絵の空気感ですとかも似てますし、そもそも近年では扉絵のある作品って減っていますものね。羽海野先生の影響を感じさせます。
ちなみになんですが、『久保さんは僕を許さない(※以下『久保さん~』)』といえば、ポエムもたびたび話題(?)になるように…扉ページも印象的ですが、これはどのような経緯で作られたのでしょうか?

担当 デビューの経緯からそうですが、雪森先生はやはりイラストレーターとして、1枚絵の力がある人なので、その力を発揮できるよう、原則扉ページを作ることにしたというのが1点。

雪森先生 もう1点が、これは雑誌で載ることを考えたときの観点なんですけど、『久保さん~』って12ページなんですね(※YJでは連載作品は基本18ページ)。
よく言われるのが、紙の雑誌だと漫画と漫画の切れ目が分かりにくいというもの。特に短い作品なので、ここから作品が始まりますよ、という合図になるよう考えました。ちなみにこれもよく聞かれますが、ポエムは担当さんが全部書いてますので(笑)。

連載初期には扉ページのポエムを若手編集が考えるYouTube企画や、花澤香菜さんを起用したASMR動画も。扉ページの考え方もそうだが、実はかなり戦略的な作品。

――作品としてかなり戦略的な考え方をされているんですね。
また、『久保さん』は連載争奪企画での優勝を経て連載化されていますが、最初はボツだったとか。

雪森先生 そうそう(笑)。はじめはプロットで提出したんですが、担当さんがボツを。

――危ない(笑)。大損失ですよ。でもどういう理由だったんですか?

担当 なんというか…プロットで読むと『久保さん』ってすごくあっさりした内容なんですよね。可愛い女の子がいて、目立たない男の子がいて、なんてことのない掛け合いをして…というような。

――確かに文章で『久保さん~』の魅力を表現するのは難しいかもしれないですね。

担当 そう。で、もうちょっと何かないですかね?みたいな感じで1回ボツにしました。そしたらしばらくして、雪森先生からそのプロットをネームにしたものが送られてきたんです。で、ネームで見たら、何だコレ、めっちゃいいなと思って。

雪森先生 少し強気な言い方になっちゃうんですけど…。このお題・骨組みの中で、自分がとっても可愛い魅力的な女の子を描くことができれば、読者さんたちに楽しんで頂ける作品になる自信がありました。

担当 でも、それはプロットでは伝わらなくて…。僕の読み取る力が低いというのもあるのかもしれませんが…(笑)。それ以降、プロットは一度も見ていません。

雪森先生 そういえば連載になってから全部ネームで送ってますね…(笑)。

担当 でも、このエピソードに雪森先生の能力が現れているようにも思いますね。

雪森先生 なんてことない日常も、表情演出とかで何倍も素敵になると思うんです。『久保さん~』という作品は基本的に久保さんを可愛いなと思って頂くシンプルな企画の漫画です。そこを100%楽しんで頂きたいですし、私が1番楽しんでほしいところを読者さんも1番楽しんで頂けたら嬉しいなと思うので。設定や登場人物も最小限の枠組みで、理解が難しく手が止まってしまうような要素はなるべく少なくなるように意識しています。

――ご自身の「武器」を最大限生かすために、それ以外の要素の取捨選択をされたんですね。

雪森先生 そうですね。たとえば、白石くんの設定は、1話の最初の4ページぐらいで終わっているんですよね。「他人に気付かれない」という特性と、それがどんなキャラクター性に繋がっているのかが分かって頂ければいいので。あくまでメインは「久保さん」ですから、その可愛さをできるだけストレスなく楽しんでもらえるような作り方を心がけています。

担当 一方で、あくまでメインテーマは 、作品世界を拡げるためのある種の裏テーマとして「白石くんが普通の青春を手に入れる」というものもあるんですよね。

――ラブコメの主人公は、いわゆる「読者視点」と呼ばれ、あまり作品のメインとしてはフォーカスされない印象があります。

雪森先生 そうなんですが、実は、この作品は彼の成長の物語でもあるんです。青春負け組の子が久保さんを通して知らない世界に一歩踏み出していく。連載当初に比べ、「白石頑張れ!頑張ったね!」と応援してくれる読者さんが増えたのは本当に嬉しかったです。メインテーマでは華のあるキャッチーさを大切に、一方で裏テーマである「白石くんの成長」があることで、久保さんに目が行きがちな作品ですが、白石くんを応援したい、2人を見守りたいというように読者さんの幅が広がり、支えられて、読み続けて頂ける作品になれたのかなと思います。

このページのTOPに戻る