第2回で取り上げるのは、先週に引き続き2024年4月期の第22回新人漫画大賞にて、準大賞+審査員特別賞を受賞した、森三歩さんの『にんぎょの交わり』。審査員の先生からも高評価をいただいた受賞作のカギに迫る!
受賞のためのキーポイント③
読みやすさを追求する!
- 担当Check!
- この作品では右上から左下という基本的な視線誘導も守られています。例えば、5ページの2コマ目などの縦に長いコマでは吹き出しの位置も重要です。上部に吹き出しを置くことで、吹き出しを目で追っている読者がスムーズに3コマ目に入れるようになっています。読者にとって読みやすい作品は、内容が理解しやすくなり、作品そのものの面白さに繋がるので大切にしていただきたいです。


受賞と講評を通じて
編集部から読みやすいという言葉をもらったことが、自分の狙いが上手く行ったようで嬉しかったです。それまで色々な漫画賞で落選していたので、自分のやってきたことを初めて肯定できました。
この作品は恋愛物なのですが、キャラクターが相思相愛になる理由が弱いという編集部からの講評はまさに自分に足りないものを正確に指摘してもらえたのでありがたかったです。もっと人魚が知識を得る様子や美しくない人魚を好きになるくらいの可愛らしいシーンなど、関係性の積み重ねの部分を描くべきでした。私は展開を考えることが好きでこのような部分は疎かにしてしまうので今後も意識しなければいけません。

次回は中山カンナさんの『マイスター』を取り上げます!
コマ割りやセリフでなるべく読者にストレスを与えないような工夫をしていました。具体的には一つの作品の中で同じコマ割りのページを作らないことと、5ページの下半分のように縦に切ってから横に切るという基礎的な技術を大切にしています。逆の順番で切ると読む方向の可能性が2つ生まれてしまい、読みづらくなります。
しかし、7ページの下半分では読みづらいパターンをやってしまっています、それは読み飛ばしてもいいコマの時だからです。(「…そっか」のコマがなくても会話は破綻しません。)同様に、54ページで繰り返されている「毎日」というモノローグは一回でも成立します。
セリフはなるべく短くて伝わりやすい言葉を精査しました。さらに、明確な決め台詞になる言い回しも考えました。例えば34ページの「怪物だ」や49ページの「一つだって嘘はない」のようなセリフで、そのコマを見れば大体の流れが分かるようなコマを作ることを意識しました。