週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 雪森寧々先生特別インタビュー

『久保さんはモブを許さない』『おさななななじみ』の雪森寧々先生にスペシャルインタビュー! 2作連続でラブコメを描き続ける雪森先生と作品担当に、作品から溢れる「らしさ」=個性の生み出し方を伺いました。

その人「らしい」キャラクターは“感覚”と“理論”の両輪で!?

――キャラクター作りの過程について教えてください。まっさらな状態から、どのように登場人物たちを形にしていくのでしょうか?

雪森先生 企画の段階で「こういう可愛い女の子を描きたい」という方向性は決まっているので、まずはイメージや雰囲気といった感覚的な部分から、作品の中心となる主人公やヒロインを作ります。
そのうえで、主人公とヒロインの二人だけでは広がりにくい部分や、物語を動かすために必要な要素を補うキャラクターを、後から配置していきます。
『おさななななじみ』(以下『なななな』)でいえば、「大人しいけど幼馴染みにだけ心を許しちゃう女の子って可愛いよね」という感覚的なイメージからヒロインが生まれて、そこに物語を支えるサブキャラクターを組み合わせていく流れですね。

――なるほど。コアとなるキャラクターは感覚的に、サブキャラクターは理論的に作られているのですね。私の中では、雪森先生の描くサブキャラクターといえば『久保さんは僕を許さない』(以下『久保さん』)の須藤くんが印象的なのですが、彼のようなキャラクターもそうした考えから生まれたのでしょうか?

雪森先生 彼はちょっと事情が異なっていて、「男の子のキャラクターを出したい」という気持ちから生まれたキャラクターです。
それでも、サブキャラクターは主人公やヒロインだけでは見られない感情や表情の一面を引き出してくれる存在だと思っています。……ちなみに、担当さんは最初、須藤くんの登場に反対していましたよね。

担当 めっちゃ反対していました(笑)。白石くんの恋のライバルになり得るキャラクターを徹底的に出してこなかった中で、新しくクラスメイトの男の子を出してしまうと、作品全体の雰囲気が変わってしまうのではないかと心配だったんです。
須藤くんはカッコよくて少しチャラい印象もあるので、読者の方に不安を与えてしまわないように、一番調整を重ねたキャラクターだったかもしれません。最終的に、彼の“好感の矢印”が白石くんに向くように調整し、「白石くんのことが好きだから久保さんと関わる」ような形で須藤くんのキャラクターが完成しました。

――主人公とヒロインの関係性の“純度”を保ちながら、物語を広げる存在がサブキャラクターというわけですね。ありがとうございます。続いて、雪森先生のキャラクターといえば、表情やデフォルメの“かわいさ”にも強い個性があります。その由来を教えてください。

雪森先生 私は、実写でもアニメでも、「可愛い」と感じた仕草や表情は積極的に漫画に取り入れるようにしています。落とし込む時には、この漫画、キャラクターならではの表現ができたらいいなと思っています。
担当さんから、デフォルメされたキャラクターの動きは『クレヨンしんちゃん』の影響を受けているのではないかと言われて、確かにそうかもしれないと思いました。
また、アイドルの表情づくり(日本のアイドルはもちろん、K-POPも含めて)から学ぶことも多く、漫画以外の作品から得る刺激もたくさんあります。
キャラクターの表情を描くうえでは、さまざまなエンターテインメントや創作物を参考にしています。

――先生の柔らかい絵柄そのものについては、どのように意識されていますか?

雪森先生 線の柔らかさについてはよく言われますが、それは単純に筆圧が弱いから、と担当さんから言われました(笑)。でも柔らかい女の子が好みなので自然と線に表れているのかもしれません。

――新人作家が「自分の絵柄」を見つけるためのアドバイスをいただきたいです。

雪森先生 自分もそうだったのですが、新人さんはまず、自分の「好き」を集めて整理することが大事だと思います。
好きな線や色合い、キャラクターの系統をまとめながら、“自分の好きの要点”を作っていく。
そこは自分の目指す方向がブレてしまわないように意識しています。
あと、自分の“好き”を大切にするのと並行して、世間の「いまの可愛い」像も意識しながら、“好き”を常に更新し続けています。世間の“可愛い”から離れすぎないように、気を付けています。

――『おさななななじみ』のヒロイン像にも、「可愛い」に対する意識が強く感じられます。

雪森先生 とにかくヒロインを可愛く描くことを考え続けています。澄ちゃんの可愛らしさは物語の魅力ですし、前作を好きになってくれた読者の方に拒否感を持たれないよう、そこは特に意識して描いていますね。

新人編集者のまとめ!
直感的なイメージを起点にキャラクターを生み出し、そこに物語を広げるための理論的な構築を重ねていく。その絶妙なバランスこそが、雪森先生ならではの“らしさ”を形作っていると感じました。

来週は台詞から雪森先生の「らしさ」を大解剖します!

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