週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 田中一行先生特別インタビュー

レッスン4:己のアイデアを疑え――。

自分にできそうなことから描くものを選んではいけない。

田中 お2人からすると、今は1番苦しい時期ではないか思います。連載ネーム会議に向けてネーム作りをするけれど、「連載デビュー」というご褒美が中々手に入らないタイミングですから。

下元前田 そうですねー…。

田中 苦しい時期に気をつけなければいけないことが、不安なあまり自分にできそうなことから描くものを選ぶ癖がついてしまうことです。

これまでお話した通り、漫画で最優先しなければいけないことは「面白さ」です。「できるか、できないか」よりも「面白いか、面白くないか」で何を描くかを選ばなければいけません。

下元 質問です。抽象的な質問になるのですが、先生が言わんとしていることは「自分の武器を変えろ」ということなのか、それとも「自分の武器を磨け」というお話なのか...。

田中 ありがとうございます。少し視点を変えてお答えすると、うまくいかなかったときに陥りがちな「悪い失敗」の一つに「全部を変える」というものがあります

できていたこと・得意なことを捨てて、ただ新しいだけのことを始めるのは建設的ではないと僕は思っています。下元さんのように、自分の武器をしっかりと持っているということは素晴らしいので、これからもその武器を活かしていってください。

僕が伝えたいことは、「手持ちの武器を使ってはいけない」ということではなく、「自分の武器を効果的に使うアイデアを、今できることから選ばない」ということです。

具体例を出すと、例えば『キングダム』の作中で千人くらいの騎馬兵がいる場面、「描けるか、描けないか」でいったら僕は描くことができません。「描きたいか、描きたくないか」で考えても、めちゃくちゃ大変なので描きたくはないです(笑)。

ただ、あそこに千人いなければ迫力が伝わらないシーンであるにもかかわらず、「描けないから、千人騎馬兵が出てくるシーンは削除しよう」という考え方は面白さを最優先しているとは言えません。

下元前田 なるほど...。

田中 つまり、自分の武器そのものについてではなくて、武器の使い方についてのお話なんです。武器をうまく使うアイデアを考えるときに、「できるかどうか」ではなく「面白いかどうか」で選んでください。

とはいっても、アイデアを出そうとして何も思いつかないときってありますよね。そんなときにオススメなのが、自分が描くかどうかを気にしないでアイデアを出してみるという方法です。

実際に、居酒屋で友達と話しているときに「次はこんな漫画描いてみよっかな~」等と、あまり深く考えずに喋っていると、面白そうなアイデアが出るという経験をされたことがあると思います。

それはなぜかというと、 自分が描くつもりで話していないからなんです。自分が描くつもりで話すと、「このアイデア面白そう!あ...でも私は絵が下手だからできないか...」といったように、無意識のうちにアイデアに色々な制限を掛けてしまうことがあります。

だから、まずは1度、自分が描くかどうかを気にせずにアイデアを出してみてください。

下元 かしこまりました!

田中 優先順位の1番上は、常に「面白いこと」です。それだけは忘れずに頑張ってください。お2人とも応援しています!

下元前田 ありがとうございました!

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