週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 雪森寧々先生特別インタビュー

ヤングジャンプ新人漫画大賞 第7回審査員の雪森寧々先生に特別インタビュー
雪森先生と担当編集が語るのは『久保さん』の“届け方”。
読者の皆さんが愛でているのは、久保さんだけではないのです!

chapter.002 読者は主人公を簡単には許さない。

ヒロインの可愛さはもちろん、“主人公の好感度”を意識して。

――あくまでメインテーマは「ヒロインである久保さんの可愛さ」ではありつつ、白石くんの好感度に対してかなり重きを置いているんですね。

雪森先生 担当さんがよく話すのが、読者さんはきっと主人公に対して「この男にヒロインをお嫁さんにやっていいのか。ヒロインに見合う男なのか」というヒロインの“お父さん”目線を持っているんじゃないかと。そこに対して私も読者さんの応援のモチベーションという意味ですごい大切だと思います。

担当 やっぱり白石くんというキャラは、読者の皆さん、全“お父さん”が、「うちの娘を何とかもらってくれないか、結ばれてくれないか」みたいな(笑)。「君があとひとこと言えば、もうこの縁談はまとまるんだ、早く挨拶しに来い!」みたいな感じで待って頂いてるというのが、すごく作品としていい状況にあるんだろうなと思います。

雪森先生 でも、この作品が最初から持っていたものじゃないですよ、そのコンセプト(笑)。

――作品が進むにつれ出来上がっていったということでしょうか?

雪森先生 出来上がっていったというか、作品の骨組みのために後から作ったという感じでしょうか。『久保さん~』を描き始めた頃、1対1ラブコメのブームというか、作品がいっぱいあったんですよね。そこで他作品との差別化も兼ねて、その当時は少なかったメインの展開・縦軸を入れてみようと思ったんです。作品の安心感は停滞感にもなると思ったので、1対1ラブコメの良さも残しつつ、白石くんの成長という縦軸も取り入れることでより読み続けたい作品になる要素になればいいなと思いました。

担当 ただ、もちろん当時はその読切感もジャンルの人気の要因だったわけなので、単にシリーズものをやっても反響がよくなかったんですよね。

雪森先生 そうでした…。最初、“お花見”編(ep.28~31)だったかな。初めてやったシリーズもののアンケートが悪くて。もうシリーズものはやらないようにしましょうって提案されて…。

――確かに単話ものを読みたくて読んでいるって人も多いと思います。雑誌1回買い損ねても読める魅力もありますから。

雪森先生 そうなんです。でも、そのシリーズはキャラクターをいっぱい出しての話で、まだ久保さんと白石くんだけでのシリーズものもやってなかったので。やだやだって駄々こねて、4巻でもう1回だけやらせてもらったんです。それがep.40~43の“映画デート”編だったんですけど、そうしたらこれの反響がよくて、担当さんが「シリーズもの、やっていいですよ」って(笑)。

担当 編集は数字にあらがえないですからね…(笑)。

――前作はファンタジーで、結構先生ご自身の趣味性が高い作品のように見えたのですが、今作はかなり「どう見られるか」の意識が強いように感じますね。

雪森先生 そうなんです。本当に好きなものを描いて、私もあの作品自体は悪いものじゃなかったって今でも思うんですけど、使い方が上手じゃなかった、ちょっと独りよがりだったのかなとは思います。
作家ひとりだけで作品を作っているわけじゃなくて。読者さんも、担当さんもみんなで作っていくもの。その中でも担当さんって一番最初にプレゼントする人じゃないですか。プレゼントを渡すからにはとびきり喜んでほしい。そうやって打合せをして、それを読者の皆さんに、大勢に刺さるもの、大勢の皆さんがにこにこしてくれるものはどういう作品かな?という基準で広げていく感じですね。単に「読者ウケ」と考えると分かんなくなっちゃうんですけど、「誰かにプレゼントをあげる」って考えるといいのかなって私は思ってます。

担当 単にウケを意識したデザインという作品でもないですからね。どちらかというと「理想の女の子」を意識して、やっぱりラブコメの読者さんに向けて、「“漫画の女の子のことを好きな人”が好きなキャラ」という意味で、こんな女の子がいてくれたらいいな、という感じなので。ラブコメヒロインのイデアみたいなものですかね(笑)。

雪森先生 イデア…(笑)。いや、そうですね。久保さんは概念です。

担当 みんなの心の中にある、クラスメートでいたかった美少女の概念ですね(笑)。

雪森先生 久保さんって別に特徴がある女の子ではないんです。新人作家さんとかは、よく編集さんに「何か魅力的なキャラを」って言われる時に、やっぱり属性をつけようとしちゃうというか。もちろん私も思っちゃうんですけど、何なら白石くんのほうがきちんとキャラとしては立つ要素があって、久保さんは要素だけ見ると無色透明なんですよ。

担当 「理想のクラスメート」という、曖昧で広い共通項。それをまとめて、作品として昇華しするというのが作品の根幹なんです。難しいですけど、雪森先生の能力ですよね。

雪森先生 とはいえ、作品として広く読まれることの中に、私個人としては、ちゃんとここに刺すんだというターゲットは持っていましたね。その両立が大事なのかも。

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