続け!新たな原石! 受賞作研究ノート!

新人漫画大賞で準大賞以上を受賞し、ヤングジャンプの研究生になった3名の受賞作を5週にわたって紹介! 受賞作制作時の狙いについてインタビュー! 「受賞者はどこにこだわり、何を意識して描いていたのか」「過去の受賞作はどんな部分が評価されたのか」など、今から応募するあなたにとってヒントになること間違いなし!

第3回 ピックアップするのは…
中山カンナさんの
『マイスター』

第3回で取り上げるのは、2025年3月期の第32回新人漫画大賞にて、準大賞+月間ベスト+審査員特別賞を受賞した、中山カンナさんの『マイスター』。審査員の赤坂アカ先生から熱量を高く評価された受賞作のカギに迫る!

あらすじ
幼い頃からバレエに取り組んでいる姉弟・未央と匠。男女ペアで踊る練習をしているうちに取り組み方の熱量の差が顕著になり…。すれ違い、衝突する2人が最高の舞台を創るまでの心揺さぶる人間ドラマ!
『マイスター』はとなりのヤングジャンプに掲載中!

受賞のためのキーポイント①

モデルを基にリアリティのあるキャラクターへ!

今まで少年誌の漫画賞に出していたので、少し捻った設定や陽キャな主人公を考えていました。そこから青年誌のヤングジャンプの賞に出すにあたり、堂々と身近な人を描いてみることに決め、今作はいとこの姉弟を参考にしました。
2~3ページ目で弟がスマホを見失ってる姉を見てすぐに鳴らしてあげるシーン、21ページ目の急に電話で夕飯に呼び出されるシーンなどは実際に目にしたエピソードです。私生活は人格と強くリンクしていると思うので、家族の日常あるあるを描きまくることでキャラの人間味を強めていくことができました。
最初は現実の〝いとこ姉弟〟を思い出して行動・口調をなぞっていたのですが、バレエへの向き合い方、ハマるものなどはモデルの2人と全く違っています。「好きなこと」と向き合うときの態度や気持ちを描写してるうちに匠と未央がそれぞれ独立していったイメージです。匠と未央のモデルが、「近所に住んでるいとこ」という近いけど客観的に見える位置にいてくれたから、上手く描けたと思います。

担当Check!
『マイスター』では未央と匠のキャラクターを深めるために、あえて同じ出来事や物事に取り組む姿が描かれています。そうすることで、二人の行動やリアクションに“差”が浮かび上がります。例えば14ページからのバレエの動画を見るシーンでは、匠は練習とは関係のない演目を趣味として見ているのに対し、未央は今練習している演目を分析するために見ています。この動画の"見方の差"で二人の現状のバレエに対する"価値観の違い"が表現されています。
このようなエピソードを積み重ねることで、未央と匠のそれぞれの価値観が明確になり、行動のイメージが浮かびやすい、一貫性のあるキャラクターになっています。

受賞のためのキーポイント②

読者を高揚へと導く演出!

見どころとして用意していた、34~35ページの見開きでは、その前のページから「来るぞ来るぞ感」が伝わるような演出にこだわりました。スポーツや青春モノなどのジャンルでよくある形だと思うのですが、山場の前に「来るぞっ!」って身構えて、“想像通り”に“想像以上”の絵が待っているという流れが個人的には最高だと思っています!
「来るぞ来るぞ感」の演出として、具体的には2つのことを意識しました。1つ目は見開きのアップのインパクトを高めるために、前のページの2コマ目で引きの絵を入れました。2つ目は前のページの最後のコマで、今まで作中に存在していなかった布のカットを"めくりのコマ"として入れて、これから来る見開きの絵を読者が少しだけ想像できるようにしました。

担当Check!
この作品では読者の想像をかきたてるために工夫されている描写が度々見られます。17~18ページは匠が未央に対して少し強く言い返すシーンですが、あえて表情を隠すことで、匠がどんな感情で話しているかを読者が考えさせられます。同様に21ページの上段でも匠の顔が見えないことで、どんな温度感でバレエをやめると言っているかを隠しています。その後、下段で泣きそうな匠の表情を見せることで本気度合いが引き立つ演出となっています。
あえて情報を提示しすぎず読者に想像してもらうことで、明確に提示するコマが描写された際に感情が強く伝わります。

次回も引き続き『マイスター』を取り上げます!

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