可愛い絵の裏に、盤石な基礎力! 絵の裏側に迫る
――先程線画までアナログだと伺いましたが、基本的にGペンで線画をしているのでしょうか。あの繊細で細やかな絵がどのようにして生まれているのかを伺いたいです。
――のあ先輩を主として、目力がとてもありますよね。魅力的な目を描くときに意識していることは何でしょうか。
目元の線の量を増やすことによって、情報量を多くするようにしています。また、のあ先輩が目力も一番であって欲しいので、キャラクターデザインの段階で各キャラクターの目の描き込み量を変えて、のあ先輩の情報量が一番になるよう注意しています。



瞳はもちろんのこと、瞼や目元まで情報量に差が付けられている。
――あくまで、のあ先輩を一番目立たせるために全てを構想しているのですね。
そうですね。のあ先輩が情報量でも可愛さでも一番になるようにしています。
――「のあ先輩」は可愛い絵柄がまず目を惹きますが、よく見ると盤石なデッサン力が背後にあると強く感じます。人体の描き方をどのようにして覚えたのか伺いたいです。
ありがとうございます。昔から、好きなキャラクターを描くために解剖学の本を買って勉強していました。また、小生は美大に行っていたのですが、大学時代も解剖学の授業を取りました。ゲーム会社に入ってからもデッサンはうるさく言われていたので、勉強の賜物かなと思います。

――やはり沢山学ばれていたのですね。ちなみに、新人作家さんが人体の描き方を学ぶ際に、オススメの本などはありますか。
『スカルプターのための美術解剖学』(ボーンデジタル社)という本です。分厚くて高価な本なのですが、痒い所に手が届くんです。「わきの構造」や「あばらの横の線の正体は何なのか」といったマニアックな情報を分かりやすく解説してくれています。これを持っていれば安心です。
――魅力的な本ですね。また、「のあ先輩」は絵にすごく柔らかさを感じます。“ふわもち感”を出すために大事なことは何でしょうか。
女の子に関しては“骨っぽさ”を出さないようにしています。カクカクしている部分をなるべく作らずに、全てを丸い線で描くイメージです。逆に、葱衛門のようなカッコイイ女性を描く際には、あえて“骨っぽさ”を出すようにしています。

――アナログで描かれているのも、線の柔らかさと関係あるのでしょうか。
個人的にはそんなに関係ないんじゃないかと思います。むしろ手の動かし方が関係していると思います。丸い線を描くことって難しいと思っていて…。上手く腕を動かさないといけないので、「この向き・この角度の線なら丸く綺麗に描ける」という自分に合った腕の使い方があるんですよ。自分に合った手癖の角度を見つけて、それが活きるように紙の方を回してみたりとかすると柔らかい線は描きやすいと思います。
――絵に関して、小さいコマのデフォルメ絵も可愛くて好きなのですが、デフォルメの練習法はあるのでしょうか。
やっぱり好きなデフォルメがある漫画を見て練習してみることですかね。小生は手塚治虫先生が大好きなので、そのニュアンスが出ないかなと思って練習していました。
――なるほど、手塚先生由来のデフォルメなのですね! ちなみに、元々憧れていた絵柄はどういったものだったのでしょうか。
憧れていたのはこげどんぼ*先生なんですけど、同人誌とかを描いていたので好きなキャラに寄っていったのかなとも思います。
――同人誌を描かれていたのですね。
はい。ちなみに、「新人作家さんは同人誌を描いた方が良い」という持論が小生にはあるので、新人作家さんもどんどん同人誌を描いてほしいと思っています(笑)。
――新人作家が同人誌を描いた方が良いと思うのはなぜでしょうか。
まず、いきなり商業で描くよりも、描きたいものへのリビドー全開で描けることです。特に二次創作は、悩んで筆が止まるといったことなく衝動のままどんどん描くことができるので、自然に上手くなると思います。
次に、〆切意識も高まります。印刷所の〆切に間に合わなかった場合、参加費をドブに捨てることになるので、自然と間に合わせる意識を持てると思います。
最後に、これが一番商業連載に関係してくることかもしれませんが、読者さんを大事にしようという気持ちが生まれます。会場で読者さんに対面で買ってもらうので、「自分にもファンがいる!」と気が引き締まります。「お金を出して良かったと思える作品を作ろう!」と心掛けるようになります。
――とても納得できました。本日は大変貴重なお話をありがとうございました!



最近は全てGペンで書いています。以前は目元だけ丸ペンを使っていましたが、切り替えが面倒でGペンに戻りました。
ただ目元は繊細に描きたいので、毎週新しいペン先、毎日新鮮なインクに変えて、Gペンでも細い線を書けるように保っています。