『久保さんは僕を許さない』『おさななななじみ』の雪森寧々先生にスペシャルインタビュー! 2作連続でラブコメを描き続ける雪森先生と作品担当に、作品から溢れる「らしさ」=個性の生み出し方を伺いました。
その人「らしい」会話を作るコツは、作家自身も等身大であること!?
――会話劇について伺います。雪森先生の作品を読んでいると、キャラクター同士の会話に柔らかな温度があって、とても自然に感じられます。そんな台詞を作るにあたって、影響を受けているものはありますか?
――日常のコミュニケーションが、そのまま作品の礎になっているんですね。
担当 実際にお会いして話すとよく分かるのですが、雪森先生は、普段のしゃべり方や立ち振る舞いがご自身の作品の空気感そのものなんです。
『久保さん』を読んでいた方なら、先生に会った瞬間「あ、雪森先生だ!」と分かるはずです。言葉を発さなくとも作品の雰囲気がにじみ出ていて、先生の人柄が素直に会話劇へ反映されているんですよね。
雪森先生 作家の言葉遣いや選ぶ単語のニュアンスは、どうしても作品に反映されます。だから新人さんほど、台詞を無理に作り込みすぎないことが大事だと個人的には思います。「こういう台詞を目指さなきゃ」と思い込むより、その人自身に合った言い回しをキャラクターに渡してあげた方が、より自然で心地よい会話になるのではないでしょうか。
――キャラクターに“特別な言葉”を与えるというより、作家自身の自然なリズムを分け与えるイメージなんですね。他にも、会話づくりで意識しているポイントはありますか?
雪森先生 キャラクター同士の会話には「フリとオチ」を用意することを意識しています。お笑いでも映画でもYouTubeでも、人が話していて「面白い」「心地いい」と感じるものには、必ず起伏や落としどころがあると思うんです。作品がふわっとしたトーンでも、会話にはほんの少しフリとオチを入れるようにしています。普段から取り入れているもののエッセンスが、無意識に反映されているんだと思います。
それから、とにかく会話が“ノイズにならないこと”も大切にしています。

間の取り方を活かした見事な「ノリツッコミ」の一幕。
――“ノイズにならない”とは、どういうことでしょう?
雪森先生 特別かわいい決め台詞を思いついた場合には、「これ言われたらキュンとするだろうな~」「自分も言われたいな」と台詞に意識が向く瞬間もあります。でも、それ以外の日常会話の台詞に関しては、作品の魅力である女の子の可愛さを損なわないよう、不自然な印象を与える“ノイズ”をできるだけ減らすようにしています。背伸びをして無理に良い台詞を作るのではなく、自分の強みである“できること”を邪魔しないために全力を注ぐ感覚ですね。
――なるほど。創作を続けていると、逆に“できないこと”にぶつかる瞬間もあると思います。その時はどう向き合っているのでしょうか?
雪森先生 「今できないからといって、十年後もできないとは限らない」と考えるようにしています。“今はできない”と認識しておくだけでも、成長の準備としては大きいと思うんです。諦めるというより、長い目で見る感覚ですね。
できないことはできるようになったらもっと素敵になれることが知れただけ。
あと器用ではないので“できること”に力を注ぐ方が私自身にはあっていると感じています。
- 新人編集者のまとめ!
- 背伸びして“良い台詞”を作ろうとするのではなく、作家自身の等身大の言葉をそのままキャラクターに渡す。それこそが会話に不自然なノイズを生まず、自分の強みである”できること”の純度を高めていく。
来週は作品担当とアシスタントさんから見た雪森先生像を伺い、客観的に雪森先生の「らしさ」を大解剖します!


雪森先生 日常で出会う方々との会話から影響を受けています。全員が自分とは異なる経験をしてきている方々なので、そこから刺激をもらったり、「今の言葉良かったな」と思ったり、「こんな考え方をするんだ」と驚きがあるので普段の会話を通して、自然と引き出しが増えていく感覚があります。