企画をたてるうえで
――ありがとうございます。面白いものが生まれるのは本当に奇跡だと思います。面白さや仕組みを因数分解されている中で、企画も細かく分析してたてられているのでしょうか?
佐久間:まずメディアの特性とターゲットはしっかりと決めます。やっちゃいけないことや、向けなきゃいけない方向はしっかりと左脳で考えて、中から何が出てくるかは思いつきの右脳に任せています。イメージとしてはところてんの出す方向を決めて、あとは何が出てくるかはイマジネーションって感じです(笑)。そういう作り方で作ったもののほうが、理詰めで作ったものよりもうまくいっていると思います。
――そのようなイメージがあるんですね! 作品を発表する媒体やターゲットを決める中で、佐久間さんはフリーになったことでテレビ以外にもYouTubeやNetflixなど媒体の選択肢が増えたと思うのですが、使い分けはどのように意識されていますか。
佐久間:どの媒体でやるのが面白いというよりも、この媒体では届かないものを考えています。例えば地上波バラエティー番組の『ゴッドタン』(テレビ東京/'05年)は基本的に首都圏の人が見ていると思っているのですが、YouTubeはどんな地方の人でも見ていると思います。なので、都内でしか食べられないお店の話よりもコンビニでどこの地域でも手に入るものの話のほうがYouTubeでは向いています。最低限そういうトンマナとその媒体の年齢層だけは覚えておいて、大量に考えてあるネタを媒体に合わせて絞ったうえで、自分が面白いと思うものをやっています。
――佐久間さんの映像作品を拝見して、企画力だけではなく、芸人さんの核のような部分を見抜く力が卓越していると感じました。なにか見抜くポイントがあるのでしょうか。
佐久間:他の人が面白くないと言っていても、自分がこの人のこの部分が面白いと思ったらその直感を信じます。そこからどうして面白さが世の中に伝わってないのか分析します。なので売れそうな人を見抜こうとしているわけじゃなくて、面白いと思う人の魅力がどうやったら伝わるかを精いっぱい考えて、YouTubeなどの企画で魅力を最大限発揮できる環境を作ってあげようと思っています。その環境づくりは得意です。その映像を見た他の人も活かし方がわかって使ってくれる。結果、売れていくのだと思います。
――確かに、佐久間さんの映像作品は芸人さんの魅力を活かすための説明書のような印象があります。出演者の魅力を最大限発揮できる環境をつくるために意識されていることはなんでしょうか。
佐久間:その人の魅力を理解できるようになるために、自分が面白いと思ったものを他人に話す癖をつくります。何が面白いと思ったのか説明するということは世の中に伝えるってことです。それが誰かを魅力的に見せるときに役立ちます。僕は小さいころから面白いと思うものを人に勧めていて、今でもそれを続けています。
環境づくりで大切にしていることは、リングの上で本人が覚悟できた部分しか笑いにしないということです。お笑い芸人だけじゃなくてアイドルも、その人の中ですでに覚悟ができている部分と、出したら傷つくから出したくない部分があると思います。でも、簡単に出してもいいですよっていうところだけで映像を作ると、塗り固めたお仕着せのようになってしまう。僕はそこをしっかりと話し合って、バランスを見ながらブレンドすることが得意だと思っています。出していいと出したくないところのちょうどいい部分を調整して、覚悟してもらえているから、僕の番組で面白さが伝わる人がいるのかもしれません。
――今後の展望をお伺いしたいです。
佐久間:培ってきたお笑いの知見を軸に、別ジャンルで活かすことで、世界で通用するエンタメを作ってみたいです。どのジャンルだったら通用するかを考えています。「日本の笑い」は社会性や、固有名詞を振りに使ったり、文脈が複雑過ぎたりして世界の人には伝わりません。でも、「お笑い」の要素は幾らでも世界に通用すると思っています。
例えば、お笑いの手法で培った、「“こういうところは人を裏切ったほうが笑ってくれるんだな”っていうのを反転するとホラーになる」というイメージです。
僕は日本の笑いを経験した人にしか作れないものがあると思っているので、世界に行きたいというよりか、まだ世界にないものを作ってみたいです。
――その作品が世に出るのを楽しみにしています。ありがとうございました!
佐久間:ありがとうございました。