週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 野田サトル先生特別インタビュー

2週目:“取材”の極意

――先生が感じる、取材をしたうえで漫画を描くことのメリット・強みを教えてください。

はるばるロシアとかまで行きましたけれど、結局取材をした方が効率がいいんです。資料とか読んでも、いまいち理解できなかったり、欲しい情報を見つけるのに時間がかかったり。でも現地の専門家に会って聞けば痒いところに一発で手が届く。思わぬネタも聞けます。阿寒湖のアイヌ料理のお店へ伺ったら、「昔この近くで 脱獄した囚人たちがアイヌに成り済まして隠れていた」なんて話を聞いて、そのまんま使いましたし。
あとは作画の効率がいいんです。アイヌの民具とか図録資料とかだと正面しか写真がないのですが実物を見に行けば様々な角度で撮影できますので、それをキャラの動きに合わせて描くことが出来ました。

実物を撮影することで描ける絵の幅が広がる。

――取材をする際に意識していること、自分の中のルールなどあれば教えてください。

時にはカメラマンさんだけで行ってもらったこともありましたが、やはり写真資料なんかは自分も一緒に撮った方がいいんです。その場で疑問が生まれても対応できますし。欲しい絵を一番わかっているのは自分なので。その場に僕がいったから撮影ができたりすることもありました。機関車の展示されている博物館へ行ったときに機関車の側面の足場に登って良いと館長から特別に許可が出まして。そこからの目線で臨場感のある絵が描けました。これは信頼関係があったから許されたので、他の方は真似しないで下さい。

撮影した豊富な資料写真が臨場感ある構図を可能にする。

――過去、印象に残っている取材があれば教えてください。

樺太のニブフ民族のお家に取材でいって、ご飯をごちそうになったときに、小学生くらいの女の子がいまして。アザラシの肉をモシャモシャ食いながら、なんの取材か僕たちに聞いてきたんですね。僕が『ONE PIECE』って答えたらジタバタして喜んでて。やっぱり『ONE PIECE』って凄いなあってなりました。もちろん「嘘だよ」と言いましたけど、ゴールデンカムイのアニメとかも観て気に入ってくれていると嬉しいですね。

――取材前の準備で欠かせないことはありますか?

時間を無駄にしないように事前に調べつくしますね。舞台として絵になりそうなところとか、博物館とかにある資料に何か面白そうなものがないか、とか。効率よく周るコースも考えます。

――色々な取材に行かれているかと思いますが、初めての場所に取材を申し込む際のコツがあれば教えてください。

これは、やはりヤンジャンだったり担当編集さんのお力がとても大きいですね。SNSとかで個人で漫画を発表出来る時代ですけれど、出版社がついてくれていると一般人では絶対に見られない、入れないところに取材できますので。東京上野博物館の倉庫の中のものとか。個人で描く作品ってやはり限界があると思います。

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