第2週 研究生ピックアップインタビュー①
この1年間で受賞をし、デビューしていった新人作家の方々にお話を聞きました!
投稿を迷っている方、作品制作に悩んでいる方のヒントになることも…!!
――染井先生が漫画家を目指された理由を教えてください。
――受賞作のアイデアはどのように思いつかれたのでしょうか。
今まで読切を描いてきた際に、話が大きくなりすぎてしまうことが多く悩んでいたので、男女2人が付き合うまでのシンプルなラブストーリーを描こうと考えたのが始まりでした。私自身恋愛が苦手でなかなかアイデアが出ませんでしたが、実際に自分の経験を顧みて、初めて手を繋げた時に「ここまで真面目に頑張って生きてきて良かったな」と感じた瞬間を思い出しました。そのシーンを描きたい、その時の気持ちを形にしたいというのが本作の根幹です。その後はラブストーリーを描くうえで感情が際立つように計算しながら話を作りました。本作の主人公では、生きていてよかったと思える瞬間を一番ドラマチックに演出するために、いいことが一つもない陰キャにしました。ただ、「陰キャ」「陽キャ」という括りが好きではないので、それを言葉にして伝えられるヒロインを出しています。
――数ある媒体の中でヤングジャンプの漫画賞にご投稿された経緯を教えてください。
実はもともと別の媒体に担当編集の方がついていました。そちらの漫画賞で奨励賞などを受賞していたのですが、次のステップに進めない状況でした。そんな中出来上がった作品が「陰キャ、部屋に花、飾ってみた。」です。完成したらすぐに賞に出したかったのですが、当時お世話になっていた媒体の漫画賞だと結果が出るのが大分後になってしまうので他誌で出そうと考えて色々な媒体を探しました。ですがこの作品58ページもありまして…。何とか短くしようと考えてみたのですが、どこも削れないなという結論に至り、思い悩んでいたときに出会ったのがヤングジャンプさんの新人賞でした。新人漫画大賞はページ数に制限がないので提出締切の最終日ギリギリに提出しました(笑)。
――他誌にも担当がいらっしゃったとのことですが、ヤングジャンプの研究生になられた決め手は何でしょうか?
メッセージ性やキャラクターの人間性といった部分をしっかり見てくれていると感じたからです。他の媒体だと企画の真新しさなどを重視されることが多かったのですが、自分のやりたいことは人間ドラマを丁寧に描くことでした。そこを評価して、将来性を買ってくださったヤンジャンさんのカラーの方が合っていると思いました。また、今までは「一人の漫画家の卵」という扱いだったのが、研究生という立場になることでワンランク上のステップに進めるというのが魅力的だったというのも決め手の一つです。
――研究生前後で何か変化したことはございますでしょうか?
自分に自信が持てるようになりました。ヤングジャンプでついてくださった担当さんが、私が作品で何を伝えたいのかをすごく掘り下げてくれるので、漫画制作の一つ一つのステップを全て手厚くサポートしてくれていると感じています。
また、編集部全体でも私のことをしっかり見てくれていると感じています。一度企画を会議に提出してボツになった際に副編集長の方とお話する機会も設けていただきました。副編集長に「どんな作家としてやっていきたいのか」ということを問われて自分の原点を思い出すことができました。新人の自分にここまで目をかけていただいているということもあって、研究生になってから自信というか自分の可能性を信じてもいいのかなと思えるようになりました。
――初参加の研究生懇親会はいかがでしたでしょうか?
東京タワーが間近で見える会場で、あそこまでの規模の会を開催してくれるとは思わず…研究生のことをとても大切にしてくれていることがよく分かりました。ご飯も美味しかったです(笑)。同じ研究生として頑張っている方や二宮先生、峰浪先生など色々な漫画家さんのお話を聞けてとても刺激的でした。特に研究生の方とは、どの賞に作品を出したかだったり、漫画家同士でしかわからないような内容を共有したりすることができたので、自分も頑張らなきゃという気持ちがとても大きくなりました。
――フィリピンのボランティアに関してもう少し詳しく教えていただけますでしょうか?
私は学生時代にコロナ禍の関係でほとんど海外に行けなかったのですが、海外ボランティアにとても興味がありました。新人漫画大賞の賞金が入った際に今ならいけると思い、フィリピンの孤児院へ住み込みのボランティアに行ってきました。子供たちと触れ合って一緒に遊んで素敵な時間を過ごすことができたうえに、ごみ拾いで生活している人だけがいるような貧困地域を見学させていただいたり、その他フィリピンの文化に触れたりして、非常に勉強になりました。とても印象的だったのが、ぎりぎり雨をしのげるような、四畳半の狭い部屋に十人ぐらいで暮らしている家庭の子供たちが、テレビも何にもないのにとても日本の漫画に詳しかったことです。『NARUTO』『ONE PIECE』はもちろん、比較的新しい『チェンソーマン』も知っていて驚きました。苦しい生活だとしても漫画やアニメの話をするときは、子供たちの目が輝いていたことが忘れられません。その目を見て、理不尽な状況に置かれていても、心にキラキラしたものを与えられる漫画の力を改めて実感しました。傲慢かもしれませんが、私も自分の漫画を通して、辛い状況の人々に希望を与えられるんじゃないかと思い、もっと頑張ろうと気合が入りました。
――現在取り組まれていることを教えてください。
現在は、研究生特典のチャレンジ連載権の3話完結の読切ネームを制作しています。研究生の支援金と漫画賞の賞金でフィリピンのボランティアに行ってきたので、そこで見たものや感じたことを伝えるためにテーマを考えました。ただ、3話完結というあまり見ないフォーマットなので、今までの読切と違いどこで話を区切るのか、話の強弱をどうつけるか、まとまりのある話を作るために試行錯誤しています。また私は作家のメッセージをしっかり感じられる作品が好きなのですが、いざ自分でやるとどうしても説教臭くなってしまうので、なるべく文章で語らずにキャラクターの動きを通して語れるような話作りを心掛けています。
――今後の目標を教えてください。
直近では今取り組んでいる作品を納得のいく形で仕上げて雑誌に掲載することを目標にしています。最終的には、世界中に届いて誰かにとっての宝物になるような、「私の人生を救ってくれた」と言ってくれるような物語を作るべく頑張ります!
――最後に、ヤングジャンプで連載を目指す新人へ一言お願いします。
ヤングジャンプさんはいろいろな作品を受け入れてくれるところだと思うので、どこに出そうか迷ったら、ヤングジャンプさんに出すといいと思います。私も頑張りますので、一緒に頑張りましょう!
次回は…ヤングジャンプ、となりのヤングジャンプに多数の読切を掲載している
起田ねぐせ先生をピックアップ!
私が漫画に救われてきたように、誰かの生きる軸になる作品を作りたいと考えたからです。自分を形作るものが一体何なのかを考えたときに、いつも中心にあったのが漫画でした。私が苦しい時、この主人公だったらこうすると考えたり、ずっと大切にしている台詞を思い出したりすることで、自分がこうありたいという姿で生きてこられました。そんな日々を送るうちに、今度は自分が誰かにとっての救いになるようなものを作りたいと考えるようになり、漫画家を志しました。