週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ 赤坂アカ先生特別インタビュー

第四幕:キャラクターを立てるとは?

――キャラクターを立てるとはどのような意味でしょうか。また立てるために大切なことを教えてください。

自分がキャラクターを立てるというのは、最終的に属性を崩壊させて真逆の状態へ持っていけるようにキャラクターに強い要素を与えるやり方です。元からやや貧乏だったキャラがもっと貧乏になってもあまり面白くありません。お金持ちのキャラが貧乏になったほうが面白い、頭のいいキャラがアホなことをするから面白いのだと思います。立たせたキャラクターを崩すことで崩壊のエネルギーが生まれます。そのエネルギーは一、二、三話を面白くするために使うことができるのでキャラクターの崩壊まで前もって考えるべきだと思います。
一番大切なことは、崩す前提であることをわかりやすく匂わせてはならないという事なのかなと思います。
お金持ちのキャラが今後落ちぶれることを読者が感じてしまうと、びっくり出来ません。。びっくりするということは読者の印象にしっかり残るほど深く刺さったということだと思っています。その刺さった要素を利用して展開を広げていくので、読者のびっくりは大きい方がいいかなと思います。匂わせないようにするためには「このキャラクターのまま、単行本を十冊出す」という心構えでテンションを緩めずに思いっきり描くことです。その状態からあっさりと逆のことをします。このようにギャップを作ることは、現代の漫画において有効な手段だと思っています。

――男性キャラクターと女性キャラクターを作る際にそれぞれ気をつけていることはありますか。

僕は男性なので、女性の気持ちは正確にはわからず、メイクの話などをしてしまうと嘘くさくになってしまうと思います。なので割り切って「女性もお腹が空いたら牛丼を食べたいだろうな!」というように人類が誰しも思う部分を重点的に描いています。

――読者がキャラクターに感情移入をするために意識していることを教えてください。

『かぐや様』や『【推しの子】』の際には誰もが隠しそうな本音や人間のダークな気持ちをおためごかしじゃないようにきちんと出すことを意識しました。それを何とかコメディーに落とし込んで表現することが大切だと思ってます。例えば、友達に裏切られても怒らずにへらへらしているキャラクターはキャラクター設定からはみ出さないキャラクターに見えてしまいますし、女の子も「分かんない。えへっ」みたいな純粋無垢で嘘くさいことをすると読者には響きません。
ダークな気持ちをコメディーとして出すためにはアニメ『ポケットモンスター』のロケット団を想像してみてください。ロケット団はしょうもない悪いことをやっているのですが、楽しそうだったり、コメディーで表現したりされているので視聴者に許されています。そして最後は勧善懲悪で退治されるのでブラックジョークとして面白く、冗談で済んでいると思います。

――脇役のキャラクターはどのように考えていますか。

僕は脇役キャラクターの言動を通して主人公やメインキャラクター側の感情を揺さぶることを大事にしています。そうすることで、メインキャラも脇役も両方のキャラが立つのかなと。メインキャラクターを立てるための回ではどのキャラクターと絡ませると一番立たせたい要素が強く出てくるのかを考えてからお話をつくることが多いです。そのために色々な引き出し、要素を持っている脇役キャラクターを何人か準備しておいた方がいいと思います。また、メインキャラクターのよさを出す上で絡まない予定だったキャラクター同士が絡んでみたら面白かったという偶然の産物が生まれることもあります。

――最後に新人賞に応募する人へメッセージをお願いいたします。

アイデアの数を出すことをめちゃくちゃ頑張ってください。お話を考えるときはネームまで描かなくてもいいです。シナリオだけでもいいので自分にとって負担の少ない形で百個くらいアイデアを出して、一番心がときめいて面白かったアイデアを形にすれば、その作品はアイデアの数の分面白いものになります。自分が持っている武器は意外と自分ではわからない場合があるので、いろんな作品を描いてみてください。
あと、エルフは意外とわからない人が多いです。気を付けて!(笑)

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