新人漫画大賞で準大賞以上を受賞し、ヤングジャンプの研究生になった3名の受賞作を5週にわたって紹介! 受賞作制作時の狙いについてインタビュー! 「受賞者はどこにこだわり、何を意識して描いていたのか」「過去の受賞作はどんな部分が評価されたのか」など、今から応募するあなたにとってヒントになること間違いなし!
受賞のためのキーポイント①
対比構造を用いて、変化を明確に!
- 担当Check!
- 作中では主人公の変化が丁寧に時間をかけて進んでいます。例えば36~42ページで主人公とヒロインが衝突してヒロインの強い主張を聞いた際、主人公はその場ですぐに謝っていませんでした。まずは放心状態で家に帰り、自己嫌悪に陥る姿が描かれています。そこから反省をしていく中でヒロインの言葉が響いていき、花というキーアイテムが後押しとなり、明確に内面の変化・成長が生まれています。
一つのきっかけで急激な変化をするのではなく、丁寧に変化の過程を描くことでリアリティのある心理描写になっています。
受賞のためのキーポイント②
作者の持つ価値観を作品へ!
この作品では「自分の価値観が透ける話」を目指しました。恋が実るまでの話はこの世に数えきれない程あるので、私だからこそ描ける、私にしか描けないラブストーリーを考えようとしました。それは私の価値観が滲んだ作品であるはずなので、意識していたし、これからも譲れない部分だと思います。
この作品を考えていた時、周りに「死にたい」と言っている人がいて、そういう人たちになんて声をかければいいのだろうと考えていました。自分の漫画で元気になってくれたらいいな、なんておこがましいかもしれないのですが、主人公を通して、物語を通して、共感を通して、それこそ、誰かの何かが変わったらいいなと思いながら最後まで描きました。だから物語全体の至る所に気持ちが滲み出せたと思います。
具体的に取り組んだことは、ちょうどその時期に私が体感した、「恋人と初めて手を繋いだ時」などの生きていてよかったって思えた瞬間を思い出して、作品に落とし込みました。自分の実際の出来事から味わった感覚を作品の細部に乗せた方が感情の揺れ動きを繊細に描けるし、説得力も増すと思っています。他には、この作品を描いている間は自分の部屋に花を飾って生活していました。
- 担当Check!
- 本作では、物語の序盤2ページに主人公の価値観が明確に提示されています。例えば「350円があったら花を一本買うのではなく、お酒を買う」「600円あれば牛丼を選ぶ」といった三大欲求と照らし合わせた具体的なエピソードを通して、主人公が“花”をどのように捉えているのかが示されています。同時に主人公の寂しげな表情も描かれていることで、彼の価値観が虚しいものだと表現されていました。
そして物語のラスト2ページでは、序盤と同じモノローグが再び登場します。そこで最後の「でも俺は」という一言が序盤との対比になり、主人公の変化がわかりやすく描写されていました。主人公の成長を通して物語のテーマやメッセージが示されるため、どこが変化したのかわかりやすいことでより明確にメッセージが伝わってきます。
受賞と講評を通じて
「心理描写を丁寧に」と「まっすぐなメッセージ性」を意識して描いたので、編集部の講評でその部分が評価されて、わかってもらえて嬉しかったです。
審査員の二宮裕次先生から「もっと主人公を応援できる描写があったらよかった」と講評をいただきました。確かに受け身の部分が多い主人公だったので、連載する上では応援される主人公像は絶対必要な部分だよな、と再確認できました。今だったら二宮先生のおっしゃる通り、序盤で主人公を応援できる様な要素を付け加えたいです。誰も見ていないけど丁寧に仕事している姿などを絵で見せることができたかもしれません。





読切は主人公が課題を克服し、わかりやすく変化をすることが大事だと思っています。そこで、変化の前と後を明確に示すために対比構造を考えながら作品を制作しました。
恋が実るシンプルなラブストーリーを描こうとしていたので、「どんな人の恋愛が実ったら面白いだろうか」という思考から、主人公として「恋愛と対極にいる人」を模索しました。主人公の内面の変化を考える際は、56ページで恋愛が実った時に「生きててよかった」と強く思わせるため、それまでは「何のために生きているかわからない人生」にしようとしました。
キーワードとしても、暗いイメージのある「陰キャ」と明るいイメージのある「花」や「生きる喜び」と「母親の死」のように対比する要素を用意していました。